英国の歴史ある芸術組織「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ」が創設250年の一環で、2018年に設けた「ロイヤル・アカデミー建築賞」。栄えある初回の受賞者となったのが長谷川逸子氏だ。現在は、中国を中心に設計活動を続ける。淡々とした語り口のなかに、女性建築家として、男性優位の世界の舞台で闘ってきた強い意志と努力が垣間見える。

ロイヤル・アカデミー建築賞の受賞はどんな反響がありましたか。

 インターネットで公表された後、直接電話で連絡がありました。早々にピーター・クックさんや森俊子さんなど、海外にいる建築家の方々からメールでお祝いをいただいたり、過去に建築を設計した街の市長、県知事からメッセージをいただいたりしました。

 でも日本の建築界からは反応はなし。事務所では、「日本の建築界に認知されない長谷川逸子」って言っていました(笑)。

元の事務所の1階で、ロイヤル・アカデミー建築賞のメダルを首に掛ける長谷川逸子氏。この場所は2016年から展示とレクチャーのスペース「gallery IHA」として開放している(写真:山田 愼二)
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世界での認知度は高いのに、海外で実現した建築が少ないのはなぜでしょう。

 男性のパートナーがいないから。私の感覚では、それは大きかったと思います。欧米は特にそうですね。国際コンペで上位の成績を収めてきましたが、海外で実現した建築は中国だけですから。何度か米国のコンペで1等を取ったときも、最近ではオーストリアのコンペでも、必ず「パートナーはいないのか」と聞かれるんです。「いない」と言うとそこで仕事はストップする。

 世界的にみても、女性建築家が1人で設計しているケースはまれです。世界の建築界は、まだまだ男尊女卑ですよ。米国でも欧州でも、男性の仕事ですね。女性建築家は、日本が一番多いくらいじゃないでしょうか。

「山梨フルーツミュージアム」(1995年)。3つの鉄骨ドームがある。鉄骨の接合部は、片側にあらかじめワンサイズ小さなパイプを仕込んで溶接している。英国で特に話題になったプロジェクト。アラップが構造設計を担当した(写真:三島 叡)
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