後藤治氏が、工学院大学で教壇に立ちながら長年、各地で取り組んできた保存・活用の仕組みづくりが実を結び始めている。地域の貴重な街並みや建物の保存・活用には何が必要か、問い続けた成果だ。同大学の理事長となった今も、要職の傍ら、人材育成や新技術の開発にも精力的に取り組む。

古い街並みや建物の活用が全国で広がっています。後藤さんは2018年、どのような活動に力を入れましたか。

 私はここ数年、建物などのプロジェクトよりも「社会制度」をつくることに注力してきました。そのなかでも18年、特に力を入れたのが、古い建物を保存・活用しやすくする建築基準法の「適用除外」の制度化と定着に向けた取り組みです。

工学院大学理事長の後藤治氏。同大学の自席にて(写真:山田 愼二)
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建基法の適用除外については、国土交通省がガイドライン(歴史的建築物の活用に向けた条例整備ガイドライン)を策定しましたね。

 国交省のガイドライン作成を検討した連絡会議も、私が委員長を務めました。このガイドラインができたことで、自治体が条例をつくって既存不適格の古い建物を建築基準法の適用除外に指定すれば、保存・活用のための改修がしやすくなります。

実際に適用除外の条例を運用した事例はありますか。

 まだ条例を制定した自治体は少数ですが、神奈川県箱根町の「富士屋ホテル」は好例として挙げられます。ここ数年の私の取り組みが結実した代表ケースの1つです。

 富士屋ホテルは、木造4階建ての本館(1891年)などが国の有形登録文化財ですが、既存不適格の建物群でした。そこで、地元の箱根町は2017年12月に文化財保護条例を改正して、登録文化財でも建基法の適用を除外できるようにしました。それに基づいて、18年11月に神奈川県建築審査会が、富士屋ホテルを適用除外に指定しました。今、耐震補強を含む改修工事が進んでいます。

条例づくりや適用除外のプロセスはやはり大変ですか。

 4階建ての大規模木造を含むので、非常にハードルが高かったですね。自治体も慣れていないので、適用除外に向けた手続きは思った以上に大変で、関係者がいろいろな努力を重ねて適用除外にこぎ着けました。

 なんとかしゃくし定規ではない運用ができましたが、もっと簡便にできる仕組みが必要だと実感しました。スムーズに運用できるようにならないと、こうした建物の保存・活用は広がりません。

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