訪問販売でしつこく勧誘され、断り切れずに契約したものの、後で冷静に振り返ると「やはり不要だった」と後悔する――。そんな消費者を救済する目的で設けられているのが「クーリングオフ」の制度だ。

 これは「特定商取引に関する法律」(特商法)の9条で規定されている仕組みで、契約を交わして8日以内であれば、消費者は無条件で契約を解除できる。

 しかし、契約から3カ月以上経過したにもかかわらず、消費者のクーリングオフを認めた判決が、2018年9月に大阪地方裁判所で下った。戸建て住宅の塗装工事をめぐる訴訟だ。

 2016年6月5日、塗装工事会社コーホーペイント(大阪府吹田市)は、大阪府内の戸建て住宅の居住者との間で、外壁や屋根などの塗装工事の契約を結んだ。訪問販売から契約に至った工事で、請負金額は約420万円。主要部分の塗装には高額な遮熱塗料を採用した。

 同社は、9月1日に塗装工事に着手。居住者は、その4日後に工事代金の一部として120万円を支払った。

 ところが、工事開始から10日後に、同社が使用期限切れの塗料を使ったり、居住者の指定とは異なる色の塗料を使っていたことが発覚。居住者は9月14日、同社に対して工事契約の白紙撤回を要求した。契約して3カ月以上経った段階で、クーリングオフを行使する意思を示したのだ。

 これに対して、同社は残りの工事代金の支払いを求めて居住者を大阪地裁に提訴。一方の居住者は、既払いの工事代金120万円の返還を求めて反訴した〔図1〕。

〔図1〕工事会社は残金の支払い求め、居住者は契約無効を主張
(イラスト:浅賀 行雄)
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 大阪地裁は居住者の主張を認め、コーホーペイントに対して120万円を返還するように命じた。同社はこの判決内容を不服として控訴した〔図2〕。

〔図2〕残金の支払いを求め工事会社が居住者を提訴
日付 事柄
2016年6月5日 工事会社のコーホーペイントと戸建て住宅の居住者が、外壁と屋根の塗装工事の契約を結ぶ。請負代金は約420万円。同社の訪問販売から契約に至った
9月1日 同社が塗装工事に着手
9月5日 居住者が、同社に対して工事代金の一部、120万円を支払う
9月11日 同社が、使用期限切れの塗料や、居住者の指定とは異なる色の塗料を使用したことが発覚
9月14日 居住者が同社に対して、工事契約の白紙撤回を要求。同時に、既払い代金120万円を返還するか、施工済みの部分を元通りに戻すよう書面で要求
12月12日 居住者の代理人弁護士が同社に対して、9月14日付でクーリングオフ(特商法9条1項)したことを確認する通知を出す
17年3月23日 残りの工事代金などの支払いを求めて、同社が居住者を大阪地裁に提訴。これに対して、居住者は既払いの工事代金などの返還を求めて同社を反訴
18年9月27日 大阪地裁がクーリングオフを認め、既払いの工事代金120万円を居住者に返還するよう同社に命じる
居住者は請負金額420万円のうち、120万円を支払っていた。工事会社は残金の支払いを求めて居住者を提訴。居住者は工事契約の無効を主張した(資料:判決文を基に日経ホームビルダーが作成)

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