米国建築は、新しい切り口の評価基準を生み出すのが得意だ。米ワシントン州シアトルでは、築100年近いレトロ建築が、環境総合評価指標「LEED」のゴールド認証を取得している。武器となったのは、2017年に始まったばかりの米資産管理・評価システム「Arc」。日本でも築87年のビルが、Arc国内導入の第1号として、価値向上に成功している。村野藤吾の独立第1作となる東京・日本橋の「近三ビル」だ。

村野藤吾の独立第1作となった近三ビルヂング。築87年。東京都中央区日本橋に立つ(写真:近三商事)
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 東京都中央区日本橋に、米ニューヨークの摩天楼を代表するエンパイアステートビルと同じ、1931年に竣工したオフィスビルがある。独立後の村野藤吾が最初に設計したとされる「近三(きんさん)ビルヂング(以下、近三ビル)」だ。築87年の同ビルは、東京都選定の歴史的建造物でもある。これまでに7回もの改修や増築を繰り返してきた。

竣工当時の近三ビル。1931年(昭和6年)に完成した。戦火にも耐え、増築も含めてこれまでに7回の改修を実施してきた(写真:近三商事)
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 実はこのビル、米国建築に学んで競争力を高めた。2017年4月に導入した米資産管理・評価システム「Arc(アーク)」の国内導入の第1号となったのだ。

 Arcとは、建物の管理状況のデータを収集・蓄積するウェブ上のプラットフォームで、2017年に本格稼働したばかりだ。登録者は「エネルギー」「水」「廃棄物」「公共交通利用度」「快適性」に関する実測データを定期的に入力する。蓄積されたデータは、国際的な環境総合評価指標と相対評価され、建物の運用状況が100点満点で提示される。算出された得点を用いることでLEED認証の取得が可能だ。60点以上で「LEEDゴールド認証」、80点以上で最上位の「LEEDプラチナ認証」が取得できる。

近三商事の森隆社長(左)と森正隆専務(中央)。右はArc Skoru Inc.のスコット・ホーストCEO。近三ビルヂングは、米資産管理・評価システム「Arc」の国内導入第1号となった(写真:近三商事)
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 近三ビルを管理する近三商事の森正隆代表取締役専務は、「得点は66点で、LEEDのゴールド認証を取得した」と言う。運用実績を改善すれば、さらに上位のプラチナ認証も狙える。つまり、たゆまぬ運営努力が建物の評価を高める。古い資産を真面目に運用する事業者にとっては、「新しいビルに負けずに立ち向かえる仕組み」(森専務)だ。

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