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 1990年代後半から、流通製材を公共建築に生かす構造設計に注力し、10mを超す大スパンの架構を建築設計者とともに実現してきた。研究者であり、実務者でもある稲山正弘氏に、中大規模木造の流れを総括してもらうとともに、木造建築が拡大していくための方策を聞いた。

稲山 正弘(いなやま まさひろ):1958年愛知県生まれ。82年東京大学工学部建築学科卒業。82~86年ミサワホーム勤務。90年稲山建築設計事務所(現ホルツストラ)設立。92年同大学大学院博士課程修了。2005年から同大学大学院農学生命科学研究科准教授、12年から同教授(写真:日経アーキテクチュア)
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木造加工にグレード分けを

 1986年に構造用大断面集成材のJAS(日本農林規格)が制定、87年の建築基準法改正を受け、「出雲ドーム」(92年)をはじめ、各地で大断面集成材を利用した大型公共木造建築が建設され始めた。それ以来、軸組み構造による中大規模木造の流れが続いています〔図1〕。大断面集成材による架構は、ある意味やり尽くした感もある。最近は1000m2以下の中規模公共建築で、デザインに優れたものが多く見受けられます。

〔図1〕ドームから始まり意匠性の高い中規模木造へ
1990年代以降、大型ドーム建築など大規模木造が誕生(A)。2010年の公共建築物等木材利用促進法の施行後は、大型の耐火建築も実現した(B)。最近は中規模で意匠性の高い建築が増えている(C)。日経アーキテクチュアではA~Cをそれぞれ、木造建築の第1世代、第2世代、第3世代と位置づけた(資料:稲山正弘氏へのインタビューなどを基に日経アーキテクチュアが作成)
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 しかし、こうした特別な物件になると、部材の加工は地元のプレカット工場では対応できない場合が多い。鉄骨のファブリケーターのように企業のグレード分けの仕組みをつくって、建築設計者に情報提供することも、さらなる普及に向けて必要になっていると感じています。

3階建て木造でプロトタイプ

 バブル経済崩壊後の90年代後半から、地方の公共建築で、住宅向けの流通製材を使いたいという要望が増えました。3階建て以下の中規模非住宅が中心です。私は、製材によるスパン10m超の架構を建築設計者とともに実現してきました。

 基本は、防火壁で1000m2以内に区画し、耐火要件を緩くすることで、製材を現しで見せる。私が担当したなかには、スギの105mm角材で12mスパンのトラスを構成した事例をはじめ、18mスパンの例もあります。20m以下のスパンなら、私に限らず、けっこう実例が増えています。

 私が構造設計を監修した「小林市新庁舎」の東館の設計手法は、製材による3階建て木造のプロトタイプになると思います。1棟を防火壁で二分し、それぞれ1000m2以下になるように区画するとともに、最高高さを13m以下、軒高を9m以下に抑えている。これによって地場産の製材を現しで使用でき、3段たすき掛け筋交い耐力壁「KB-WALL」に水平力を負担させ、議場ではヒノキ張弦梁で約13mスパンを実現しています。