大分県由布市のJR由布院駅前に、坂茂氏の設計による観光案内所が2018年春、完成した。湾曲させた大断面集成材を4本使い、平面が十字になるように柱を組んだ。上部ではそのアーチ梁と、波打つような曲線を描く2次アーチ梁が交差する。日本の加工技術で製作が可能な2次元曲げ材でつくった。

 2018年4月にオープンした「由布市ツーリストインフォメーションセンター」は、JR由布院駅に隣接して立つ。設計は公募型プロポーザルで選ばれた坂茂建築設計(東京都世田谷区)が手掛けた。

 坂茂氏は、磯崎新氏が設計した由布院駅舎との対比を意識し、木造で交差ボールトのような空間をつくることを考えた〔写真1〕。駅舎は中央コンコースの上に設けた塔部に木造の交差ボールト屋根が載る。また、山々に囲まれる環境に合わせて、森の中にいるような空間にしたいとも思った。

〔写真1〕木造で交差ボールトのような空間
2次元加工による十字柱が等間隔に並び、連続アーチを形成する。吹き抜けの観光案内所は由布院駅のプラットホームに面する。2階は「旅の図書館」(写真:平井 広行)
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断面図
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 そして導き出したのが、湾曲した大断面集成材を4本束ねて独立柱とし、それを小スパンで連続させる構造体だ。前提には、日本の加工技術の限界がある。坂氏は海外のプロジェクトで、3次元加工材による複雑な架構を実現したこともあるが、日本の技術では2次元にしか曲げられない。そのため単純化した格好だ。

 坂氏は「2次元の加工でも、大断面となると日本で対応できるのは数社だ。そのような日本の技術を踏まえて木造の架構をデザインした」と話す。

 柱の立ち姿は2方向のY字形で、平面は十字。見付けは部材1本が150mm、組んだときに全体で500mm。これを4500mm間隔で21本並べ、鉄骨造によるガラスの直方体と組み合わせた〔写真2〕。鉄骨造部分は透明に見せるために、方立てを兼ねた細い鉄骨材で構成している。

〔写真2〕透明な鉄骨造の箱との組み合わせ
プラットホームや車窓から町が見え、町からも電車が見えるよう、木造の架構に、ガラスを多用した鉄骨造の直方体を組み合わせている。鉄骨造のブレースは、耐力はあるが剛性のないPC鋼棒を採用した。1階の左手部分にトイレなどがあり、木造在来壁で囲んでいる(写真:平井 広行)
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 高さ約6500mmの十字柱は上部で分かれてアーチ梁になる。これにカーブの緩い2次アーチ梁を直交させた〔図1〕。1つのパターンの繰り返しで印象的な空間を生み出している。

〔図1〕ディテールから解く架構

九州内でつくれる2次元曲げ材で十字柱

十字柱は強度を確保するために米マツを使用。柱脚から頂部まで1本の部材で曲がるようにラミナは12mm厚とした。1つの建物に見えるが、エレベーターシャフトとスロープ、外部階段、手荷物預かり所は独立構造にした
断面詳細図
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十字柱は現場で組み立て、鉄筋で一体化
構造アイソメ(左)と十字柱の構成図。水平力は、鉄骨とブレース、木造在来壁で受ける。右図のように、十字柱は4分割して現場に搬入。Y軸方向勝ちで鉄筋とエポキシ樹脂の接着剤を注入して一体化した
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