契約上は対等な発注者と受注者の関係。それでも、受注側から発注側へ転職したいと思う中堅の建設技術者が多いのも事実のようだ。第4回は、建設、不動産業界専門の人材紹介会社オズペックの瀧嶋誠司社長に、建築・土木それぞれの中堅技術者の転職状況を聞いた。(聞き手は、森下 慎一=日経 xTECH)

建設業界において、30~40歳代ぐらいの中堅技術者の転職には、どのような傾向が見られますか。

 この年代に顕著なのが、「受注側から発注側へ移りたい」という転職ニーズです。具体的に言えば、建設会社などから鉄道会社や商社、物流・倉庫会社などの設計・監理部門への転職を希望するケースです。

 しかし、実際のところ、求人枠は多くありません。少ない枠に多くの求職者が殺到するので競争は厳しいです。

中堅技術者で転職後に満足しているのは、どのような人でしょうか。

 やはり今言ったような、ゼネコンの建築職からデベロッパーや物流・倉庫会社、確認検査機関、PM(プロジェクトマネジメント)会社、不動産投資コンサルタント会社のデューデリジェンス(資産査定)担当へ移った人などに、「転職してよかった」と言う人が多いようです。

 不動産投資コンサルタント会社はリーマン・ショックで、外資系企業の求人がかなり減り、国内の企業も給与水準は一時より下がっていますが、一定の求人はあります。大手のデベロッパーが検査や管理業務、改修プロジェクトにPMを採用するケースも増えています。

 ゼネコン出身者にとってこれらの職種は、それまでの経験を生かすことができるうえ、一般的に給与も上がり、ワーク・ライフ・バランスも実現できる。転職して正解だったと実感しているのではないでしょうか。

 ただし、あまり若いうちに発注側へ転職することにはリスクもあります。その業種以外の経験が積めなくなってしまうので、建設技術者としての可能性の芽を自ら摘んでしまうことにもなりかねません。慎重に、キャリアプランを立ててから行動してほしいですね。

土木職の中堅技術者については、どのような企業の求人が増えているのでしょうか。

 最近は、建設コンサルタント会社の中途採用が増えています。この業界は今、国内外で盛んにM&A(合併・買収)を進めています。そのため、英語の堪能な人や連結決算の経験者、マネジメント力の高い人などを募集しているのです。今後もしばらくはこの傾向が続くと思います。

 一方で、ゼネコンはあまり積極的にM&Aを進めていません。従って、そうした人材に対するニーズは低いといえます。

 建設業界に限らず基本的なことですが、転職しようという人は自分の強みは何かを意識し、その強みを評価してくれるのはどこか、という視点から業界や業種、企業をよく見るようにするとよいでしょう。

瀧嶋 誠司
オズペック代表取締役&CEO
瀧嶋 誠司 仙台市出身。大学を卒業後、大手ゼネコンに入社。企業留学で米国へ渡り、経営大学院でMBAを取得した。経営コンサルタント、教育サービス産業、建設系企業で取締役を10年経験した後、MBOにより、建設、不動産業界の転職に特化した人材紹介会社オズペックを設立。自らの転職経験と経営者として採用側の立場に立った経験を生かし、双方にとって最良のマッチングを追求している