建設業界では、転職を希望する若手技術者が増えているという。ただし、現実に転職は簡単ではなさそうだ。第3回は、建設、不動産業界専門の人材紹介会社オズペックの瀧嶋誠司社長に、若手技術者の転職の実情を聞いた。(聞き手は、森下 慎一=日経 xTECH)

20代前半の若い人に転職希望者が増えているそうですが、その層の転職状況はどのようになっていますか。

 新卒で入社後、数年以内に転職する人は、「第2新卒扱い」となってしまいます。つまり、就職先での経験はほとんど実績として考慮されません。というのは、建設業はいわゆる“資格産業”だからです。

 建設業法の定めによって、資格がなければプロジェクトの主担当になれないため、求人側が中途採用で求める人材は、資格保有者であることが大前提です。反対に、一級建築士や一級土木施工管理技士などの資格を持っていれば、“金の卵”として引く手あまたでしょう。

資格がないと転職は難しいわけですね。

 「絶対に無理」ということではありません。資格がなくても、やる気があれば受け入れる企業もあります。

 職種によっては資格を問われないケースもあります。例えば、建設会社の営業職は今、あまり人気がなく、人が足りないので求人は多いですね。営業部門全体の受注目標はあっても、個人のノルマはない会社が多いし、大手なら大きな金額のプロジェクトに関われるチャンスもありますから、技術者にとっても転職先としてお薦めです。

 もっとも、「資格は必ずしも求めない」というだけで、転職のハードルが低いわけではありません。人手不足とはいえ、一般的な転職市場で十分通用するレベルの人でなければ難しいことを心得ておきましょう。

資格が前提ということは、他業界から建設業界へ転職する人も少ないのでしょうか。

 各社とも受注が増えている今は、他業界に比べて給与もいいですし、ボーナスも圧倒的に多い状況なので、他業界から転職してくる人もいます。ただし、特殊分野に限られるうえ、やはり資格がないと難しいですね。

 例えば、再生可能エネルギーなどの新規事業を立ち上げるときに、「電気主任技術者資格を持っている人材がほしい」といったニーズが出てくる。こうしたケースでは、プラントエンジニアリング会社やプラントメーカーから転職してくる人が多いです。

 電気主任技術者資格の第一種、第二種、ボイラー・タービン主任技術者などは、建設会社には人材が少なく、主にメーカーに所属している人が多いので、そうした業界からの転職はあります。

建設業界で転職を考えている若手技術者へ向けて、アドバイスをお願いします。

 すでに「70歳定年制」が目前といわれています。誰もが長く働くようになる今後、何社か転職することが当たり前になるでしょう。こうした時代を前に、きちんとしたキャリアプランを立てておくことが大切です。

 私の考える「良い転職」とは、「自分の裁量権が増える転職」です。ただし、いくら裁量権が大きくなるとしても、給与が今より下がり、なおかつ、そこから上がっていく可能性が低い転職はお薦めしません。

 そのあたりを冷静に見極め、長いスパンで考えて転職先を選ぶとよいのではないでしょうか。

瀧嶋 誠司
オズペック代表取締役&CEO
瀧嶋 誠司 仙台市出身。大学を卒業後、大手ゼネコンに入社。企業留学で米国へ渡り、経営大学院でMBAを取得した。経営コンサルタント、教育サービス産業、建設系企業で取締役を10年経験した後、MBOにより、建設、不動産業界の転職に特化した人材紹介会社オズペックを設立。自らの転職経験と経営者として採用側の立場に立った経験を生かし、双方にとって最良のマッチングを追求している