慢性的な人手不足に悩む建設業界。「いい人がいれば欲しい」というのが大半の企業の採用方針だが、建設業界で企業の考える「いい人」像は他の産業と比べて保守的だ。第2回は、建設、不動産業界専門の人材紹介会社オズペックの瀧嶋誠司社長に、若手技術者の転職に対する意識と建設会社の求める人材像を聞いた。(聞き手は、森下 慎一=日経 xTECH)

建設業界の若手技術者は、転職に対してどのような意識を持っているのでしょうか。

 ゼネコンに勤める20代前半の若い人で、「今の会社を辞めたい」と考えている人が増えているように思います。

 その理由はやはり、職場環境が改善されていないからです。この年代は、ワーク・ライフ・バランスを重視する傾向がある。転職を希望する人たちは、「休みが少ない」「長時間労働で残業も多い」「転勤が頻繁」「仕事がきつい」といった点に不満を持っています。

 中でも転勤については、特に土木分野の場合、山中やへき地の現場へ配属されるケースがままあるので、嫌がる人は多いですね。全般に、「転勤したくない」という人が増えています。

 実際に建設業界の若手の離職率は年々上がっており、製造業やシステムエンジニアなど他産業へ流出しているのが現状です。

ゼネコン各社は、転勤したくない人のために、エリア採用などの制度を設けているのでは。

 一時期は、地域限定の正社員の採用枠を増やす会社もありましたが、企業側にとっては人員配置が難しくなるので、今は縮小する傾向にあります。

 企業側は雇用リスクを考えると、やはり地域限定の場合、契約社員としたいところでしょう。その地域の市況が思わしくなくなったとき、事務所閉鎖という手がありますが、正社員で異動もさせられないとなると、困りますから。

建設業界は今後も慢性的な人手不足が予想される状況です。企業側はどのような採用方針を立てていますか。

 「いい人がいれば採用して、人員を増やしたい」と考えている会社が大半でしょう。ただし、この「いい人」の基準を、企業側がどこまで広げられるのかが問題です。

 建設業界は古くからあるので、一般に、ベンチャー企業と違って社員の平均勤続年数が長い会社が多い。人事についても保守的で、いまだに「入社後離職率」を気にしています。

 例えばIT(情報通信)業界のように新興で変化の激しい産業は、先のことが読めないため、「即戦力となる人材を取りあえず採用しよう」と判断します。しかし、建設業界はそうではありません。企業側は「入社したら辞めないでほしい」と思っているので、どうしても採用には慎重になってしまうのです。

 昔ほどではないにせよ、転職回数が多い人を敬遠する傾向も残っています。「組織になじめない人物なのでは」と危惧するからです。

 建設業界への転職を考えている人は、こうした特徴も考慮しつつ、じっくりと自分のキャリアプランを練ったうえで臨むことをお勧めします。

瀧嶋 誠司
オズペック代表取締役&CEO
瀧嶋 誠司 仙台市出身。大学を卒業後、大手ゼネコンに入社。企業留学で米国へ渡り、経営大学院でMBAを取得した。経営コンサルタント、教育サービス産業、建設系企業で取締役を10年経験した後、MBOにより、建設、不動産業界の転職に特化した人材紹介会社オズペックを設立。自らの転職経験と経営者として採用側の立場に立った経験を生かし、双方にとって最良のマッチングを追求している