技術系人材を主とする産業界の中で特に人手不足が叫ばれている業界の1つが建設業界。建設、不動産業界専門の人材紹介会社オズペックの瀧嶋誠司社長に、最近の建設技術者の転職事情を6回にわたって解説してもらう。初回はまず、建設業界を取り巻く人手不足の状況と企業の採用意欲を聞いた。(聞き手は、森下 慎一=日経 xTECH)

昨今の建設業界全般の人材事情には、どのような傾向が見られるでしょうか。

 建設業界はリーマン・ショックで打撃を受けた後、緩やかに回復基調へ向かっていきました。そこに東日本大震災が起こり、いわゆる“震災バブル”に入っていった。ここで土木業界はかなり潤ったと思います。

 もっとも、一連の震災復興関連の工事は徐々に収束し、2020年にはほぼ終わるといわれています。これと入れ替わりに、建築の需要が2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて増えています。

 ですから、2020年ぐらいまでは各社とも強気の受注見込みを立てており、人材採用に関しても順調に伸びていく可能性が高いと思います。

 ただ、どの会社も、その先の見通しは立っていません。このため、「誰でもいいから採用する」というスタンスではないことは確かです。

とすると、企業は現在の人手不足にどのように対処しているのでしょうか。

 現状で、これを下支えしているのが、団塊の世代です。この世代の多くは、定年退職した後も再雇用で働き続けています。これまで再雇用は65歳までが一般的でしたが、聞いてみると皆さん70歳ぐらいまでは働いているようです。

 しかし、この世代がこの先どこまで働けるかというと、限界があるでしょう。ですから、根本的な解決にはなりません。

仕事の多い少ないにかかわらず、事業を継続していくために必要な人材が足りないわけですね。

 そうです。そもそも建築も土木も、学生の人数自体が減っています。「理系離れ」が指摘されて久しく、理系の学生自体が少なくなっています。さらにその中で、どれだけの学生が建築・土木を選んでくれるかというと、やはり少ないといわざるを得ません。

 かつては人気学科だった建築も、以前ほどの勢いはありません。大学入試の偏差値を見ても、建築学科は工学部の中で上位に位置していたのが、最近はそうでもない。

 土木はひと頃、土木工学科が環境工学科などに名称を変更して人気が出ました。しかし、それによって女性の入学者が増え、就職のときに土木の本流である施工管理系の職種を選ぶ人数が全体として減ってしまった――。それが実情です。

 ある私立大学の土木工学科の卒業生で土木系の業界へ就職する学生は4割を切っているといいます。中には大学院に進む人もいますが、多くは広告代理店や銀行、情報システム会社などへ流れているのです。

 例えば土木工学科の卒業生が100人いるとして、そのうちの30~40人をゼネコンや建設コンサルタント会社、公務員、建設機械メーカーなどで取り合うわけですから、各社で見ればほとんど新入社員が来ない状況です。建築学科も状況は似たり寄ったりでしょう。

 ですから、この先も慢性的な人手不足が続き、社員の高齢化が進むとみています。

瀧嶋 誠司
オズペック代表取締役&CEO
瀧嶋 誠司 仙台市出身。大学を卒業後、大手ゼネコンに入社。企業留学で米国へ渡り、経営大学院でMBAを取得した。経営コンサルタント、教育サービス産業、建設系企業で取締役を10年経験した後、MBOにより、建設、不動産業界の転職に特化した人材紹介会社オズペックを設立。自らの転職経験と経営者として採用側の立場に立った経験を生かし、双方にとって最良のマッチングを追求している