世界で「接合革命」が起きている。軽量化や材料の多様化により、これまでの溶接から接着剤への置き換えや併用が進んでいるのだ。このニーズを捉えた日本の接着剤メーカーが、自動車の車体向けに従来の特性を超える構造用接着剤を開発し始めた。セメダインが開発したのは、異種材料向けの低温速硬化変性シリコーン系接着剤と、超高張力鋼板向けの高耐熱・高強度エポキシ系接着剤だ。共に、従来よりもじん性を高めている。

セメダイン開発部研究第5グループの橋向秀治氏
(写真:寺尾 豊)

 異種材料の接着も超高張力鋼板の接着もこなす──。これがセメダインの開発方針である。なぜなら、自動車ボディーの軽量化設計には、大きく2つの方向があるからだ。異なる種類の軽量化材料を組み合わせて使う「マルチマテリアル」化と、引張強さが大きい鋼板を採用する高張力鋼板化である。

 セメダインは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新的新構造材料等研究開発」プロジェクトのテーマの1つである「構造材料用接着技術の開発」に、新構造材料技術研究組合(ISMA)の分担研として参画。従来の特性を超える接着剤の2種類の新しい接着剤を開発した。[1]炭素繊維強化樹脂(CFRP)を含む異種材料向け低温速硬化変性シリコーン系接着剤(MS接着剤)と[2]超高張力鋼板(スーパーハイテン材)を含む鋼板向け高耐熱・高強度エポキシ系接着剤(EP接着剤)、である。

バナナカーブを超えた強度を実現

図1●新しい接着剤の特性
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 一般に接着剤は伸びと強度がトレードオフの関係にあり、特性は「バナナカーブ」の上にプロットされる。これに対し、セメダインが開発している異種材料向け低温速硬化変性シリコーン系接着剤(MS接着剤)と、超高張力鋼板向け高耐熱・高強度エポキシ系接着剤(EP接着剤)は共に従来の接着剤よりもじん性に優れる。

 [1]のMS接着剤は、部品を個別に塗装した後、最終組み立て段階で使用する「アウトプロセス塗装」を想定した接着剤だ。狙いは、炭素繊維強化樹脂(CFRP)をはじめとするプラスチックと金属材料との異種材料接合である。そのため、接着剤の弾性率を下げて、接合物の熱応力や熱変形をできる限り抑えた。常温から80℃程度までの中温で速やかに硬化する。加えて、実使用時の寒暖差による熱ひずみを緩和し、かつ耐久性に優れる特性を備えている。

 一方、[2]のEP接着剤は、接着した後、塗装の焼き付けとともに接着剤を硬化させる「インプロセス塗装」に対応した接着剤だ。用途は、超高張力鋼を含む鋼板(鋼材)の接合だ。現在、ボディーを軽くするために鋼板の薄肉化や高張力化が進んでおり、それに伴って騒音や振動が大きくなる傾向がある。EP接着剤の狙いは、超高張力鋼板の接合を可能にして軽量化しつつ、面接合することでボディーの剛性を確保して快適性を図ることだ。

 2つの新しい接着剤の特性、すなわち引張せん断接着強さと、その硬化物の伸びとの関係を示したのが図1だ。緑色がMS接着剤、赤色がEP接着剤の特性である。塗りつぶしが開発開始前の領域、実線が目標領域、そして破線が現時点の設計可能領域、すなわち現状の実績だ。両接着剤とも、強度と伸び、耐久性を高めて、自動車の構造用接着剤としての実用化を目指している。

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