100年、いや130年に1度の変革期を迎えたと言われる自動車業界。二酸化炭素(CO2)の削減のために、燃料やエネルギーの脱化石燃料化が必要だ。問題は、無条件に電気自動車(EV)を推す声があることだ。エコでクリーンなイメージを持つEVだが、発電形態やシステム効率でCO2の総排出量は大きく変化する。自動車を知り尽くす元トヨタ自動車の技術者で愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏が脱化石燃料化に向けた「あるべき姿」を解説する。(近岡 裕=日経 xTECH)

藤村俊夫氏
愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車、PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任

 本連載の第3章として取り上げるテーマは、脱石油に向けた自動車の燃料・エネルギー対応だ。今回強調したいのは、以下の通りである。

  • 脱化石燃料のために、エンジン車の燃料をバイオ燃料や水素へ転換する必要がある
  • 電気を水素に変換して活用(貯蔵・運搬)する可能性を探るべし
  • 二酸化炭素(CO2)については、Well to Wheel(WtW)*1を踏まえたトータルCO2排出量で捉えなければならない
*1 油田からタイヤを駆動するまでのCO2排出量。

 本論に入る前に一言述べておきたい。2018年12月15日にポーランドのカトヴィツェで開催された国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)のことだ。2015年に採択、2016年に発行されたパリ協定(COP21)の実施に向け、一連のルール(実施指針)がCOP24で採択され、2020年からの本格的運用に向けた準備が整った。脱CO2に向けた各業界におけるエネルギー転換はまさに待ったなしである。

 CO2削減のために、自動車業界では脱化石燃料化を急速に進めていく必要がある。つまり、燃料・エネルギーの多様化だ。図1が、現行のエンジン車と次世代車に関する燃料・エネルギーの多様化に関する今後の「あるべき姿」だ。図中の壁の絵は「技術の壁」であり、絵の大きさは「技術の難易度」を表している。2050年時点で目指すべき比率は、多いものから順に次の通りだ。

[1]電気 約28%
[2]バイオエタノール・バイオディーゼル 約27%
[3]ガソリン・軽油 約22%
[4]水素 約18%
[5]ガス燃料 約3.5%
[6]合成ディーゼル燃料「eディーゼル」*2 約1.5%
[7]合成液体燃料 (残り)
図1 脱化石燃料化に向けた自動車用燃料・エネルギーの多様化
インフラやコスト、CO2の地中貯蔵(CCS)など課題は多いが、脱化石燃料化のために鍵を握るのは、バイオ燃料と電気、水素である。(藤村氏が作成)
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*2 高温のプロセスで水とCO2から合成するディーゼル燃料。

 インフラやコスト、CO2の地中貯蔵(Carbon dioxide Capture and Storage;CCS)といった難易度の高い技術の壁がある中で、脱化石燃料化を進めるには、バイオ燃料と電気、水素の活用が鍵を握る。これらのうち、バイオ燃料と水素燃料はエンジン車にも使える他、CO2フリーも可能だ。

 電力業界は以前からエネルギーの多様化を進めてきた。電力の源となるエネルギーは、2020年以降に石炭などの化石燃料がピークアウトし、再生可能エネルギー(風力や太陽光など)やバイオ燃料に転換していくことになる。今後は運輸業界においても、化石燃料への依存から、天然ガスやカーボンニュートラル燃料(エタノール、バイオディーゼル燃料)、カーボンフリー燃料(水素)、および電気エネルギーに転換していくことが急務だ。先述の通り、水素は燃料電池車(FCV)だけではなくエンジン車の燃料にも使える上に、クリーンエネルギーとして幅広い産業で活用できる。

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