100年、いや130年に1度の変革期を迎えたと言われる自動車業界。二酸化炭素(CO2)の削減にまい進してきたこれまでの流れに今、大きな変化が起きている。米国がパリ協定から離脱し、欧州も規制を緩めようとする動きがあるのだ。日本の自動車業界はこの動きをどう見るべきか。自動車を知り尽くす元トヨタ自動車の技術者で愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏が環境課題への対応策を分析する。(近岡 裕=日経 xTECH)

藤村俊夫氏=愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車、PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任
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本連載の第2章として取り上げるテーマは、環境課題への対応だ。今回強調したいのは、以下の通りである。

  • ・二酸化炭素(CO2)削減は待ったなし。地球規模の環境課題である
  • ・運輸・電力セクター(業界)の寄与度は大きく、強力な低減推進が必要
  • ・米国カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle;無公害車)規制と、中国のNEV(New Energy Vehicle)規制にも注意すべし

 まず直視してもらいたいのは、CO2の「現実」だ。図1に示したのは、世界の年間CO2排出量の推移である。そして、産業革命以降の累積CO2排出量と平均気温上昇との関係を示したのが図2だ。

警鐘を鳴らすIPCC

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2014年に発行した第5次評価報告書で、「人類の生産活動に由来する温暖化阻止のため、CO2低減は待ったなしの状況にある」と警告した。2013年時点で、産業革命の時代から平均気温は0.8℃上昇し、年間排出量は330億トン(t)まで増加している。このペースでCO2を排出し続けると、30年後には平均気温が2℃を超えて上昇し、多くの問題が発生する。食料危機や病気の蔓延(まんえん)、自然災害の規模拡大や発生数の増加といった問題だ。人類が地球上で生活することが困難になってくる。

 これを回避するためには、CO2排出量を2013年比で2050年に4~7割削減し、2100年には排出量をゼロに抑えることが必須となる。2018年10月にIPCCは、「現時点で平均気温は1℃上昇し、今の対策のペースでは2040年には1.5℃上昇に至る」という異例の中間発表を行った。「対策が不十分なまま、1.5℃の平均気温上昇を許すと、人間の手ではどうにもならない事態に陥ってしまう。だから、今すぐ確実な対策を実行せよ」という警告をIPCCは発したのである。

図1 世界の年間CO2排出量の推移
GtCO2は、ギガトンCO2の意味。RCPシナリオは、代表濃度経路(Representative Concentration Pathways)シナリオのこと。複数の濃度経路を考え、それぞれの将来の気候を予測している。WGⅢは第3作業部会の意味。IPCCの5次評価報告書(AR5)の政策決定者向け要約(SPM)を基に藤村氏が作成。
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図2 産業革命以降の累積CO2排出量と平均気温上昇
GtCO2は、ギガトンCO2の意味。IPCCの5次評価報告書(AR5)の政策決定者向け要約(SPM)を基に藤村氏が作成。
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