世の中の予測は間違いだらけ──。100年、いや130年に1度の変革期を迎えたと言われる自動車業界。自動車業界の将来予測は花盛りだ。ところが、「なぜそう予測できるのか、根拠が薄いものが実に多い」と指摘するのが、元トヨタ自動車の技術者で愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏である。自動車を知り尽くす同氏が、技術的な根拠を基に電自動車(EV)の実力を明らかにする。

藤村俊夫氏=愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車、PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任

 本連載で、真っ先に俎上に載せたいテーマは、自動車を取り巻く環境と次世代車の導入優先順位だ。今回強調したいのは、以下の通りである。

・環境と顧客ニーズを満たす全方位の技術開発

・自動車において大切な開発要素は航続距離と質量である

・次世代車の導入順位はハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV) となる。

 ではまず、自動車を取り巻く環境と対応技術の俯瞰を示そう(図1)。自動車には「地球温暖化」と「エネルギーセキュリティー」、「大気質」という3つの重点課題がある。こうした中、低コスト、乗る楽しさ(Fun to Drive)、安全・安心、クリーンといった自動車に本来求められる要件を満たすことはもちろん、今後は、いかにエネルギーセーブを図り、CO2を削減するかが問われる。

図1 自動車を取り巻く環境と対応技術の俯瞰
藤村氏が作成。
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自動車を取り巻く環境と対応技術の俯瞰

 その観点では、火花点火エンジン(SIE;Spark Ignition Engine)車の効率改善と、圧縮着火エンジン(CIE ;Compressed Ignition Engine)車のクリーン化・低コスト化に加えて、次世代車を含めた全方位での技術開発が急務だ。次世代車の技術開発とは、具体的にはHEV展開の拡大、PHEVとレンジエクステンダー(RE)の電動技術の革新、EVとFCVの技術大革新(電池エネルギー密度や燃料電池セル出力密度の向上など)である。

 自動車技術だけではなく、エネルギーも変化を迫られる。化石燃料から再生可能エネルギーへの電気変換だけではなく、貯蔵や輸送が電気に比べて容易な水素に転換して全産業で活用することも必要だ。費用対効果の高い内燃機関車(SIE車とCIE車)は、今後も新興国を中心に必要となる。そのためには、従来のガソリンや軽油燃料から、天然ガスやバイオ燃料、水素燃料に転換しなければならない。特に水素燃料の活用に関しては、今後液化技術と併せて大幅なコスト低減(現状の1000円/kgから200円/kgへ)の検討が急務だ。

 加えて、メーカーは業務内容を変化させなければならない。これまでは自動車を製造・販売し、ユーザーが保有するという形だった。今後はメーカーが自動車を造って売るだけではなく、自動車を使ったサービスの提供まで手掛けていく必要がある。ユーザーは自動車を所有するものから利用するものへと、クルマの捉え方を変えていくだろう。こうした130年に1度とも言われる変革に合わせて、コネクテッド(IoT)やカーシェアリング/ライドシェア、自動運転 (自律型+協調型、道路環境の整備)といった新技術の開発や検討を進めていかなければならない。

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