世の中の予測は間違いだらけ──。100年、いや130年に1度の変革期を迎えたと言われる自動車業界。自動車業界の将来予測は花盛りだ。ところが、「なぜそう予測できるのか、根拠が薄いものが実に多い」と指摘するのが、元トヨタ自動車の技術者で愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏である。自動車を知り尽くす同氏が、技術的な根拠のない調査を斬る。(近岡 裕=日経 xTECH)

藤村俊夫氏=愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、
元トヨタ自動車、PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任
(写真:都築雅人)
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 唖然とした。ある調査会社が「2050年に世界の電気自動車(EV)の比率が8割」と予測するグラフを発表していたからだ。百歩譲ってそうした予測が導き出されたのだとしよう。ところが、そんな“大胆な予測”を発表しておきながら、その根拠を全くと言ってよいほど示していないのだ。これでは控えめに言って根拠薄弱、デタラメと言われても仕方がないだろう。他の同様の予測も、根拠が薄いという点では似たようなものだ。

 最近の各国政府の政策やメディアの報道を見ても、本質からずれたり偏ったりしたものが多いと感じる。特にひどいのは、EVと自動運転に関するメディアの報道だ。

 なぜ信頼性に乏しいと言えるのか。それは、技術的な裏付けが不十分、もしくは説明がほとんどないからだ。にもかかわらず、「EVや自動運転は今後急速に拡大していく」といった煽(あお)るかのような報道には危うさを感じる。

 こうした状況に、私は「自動車の技術をよく知る人間(要は、技術者)が、技術的な根拠を踏まえて自動車の将来を予測し、それをまとめる必要があるのではないか」と考えるようになった。そして、トヨタ自動車で31年間にわたり、新エンジンの研究開発や、自動車の走行・環境・安全などに関する研究開発で培った技術的な知識や経験を踏まえつつ、自らさまざまな調査を実施。地球環境の改善に向けた各国の政策や、各種技術の完成度、交通インフラ、顧客のニーズなどを考慮した上で、これからの自動車や交通システムがどうなるかについて予測した。それを本連載で紹介していきたい。現在世間にあふれている根拠薄弱な予測ではなく、「あるべき論」と考えてもらえればよいと思う。

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