「20年後には、今のインターネットを語っているのと同じように、ビットコインのことを語っているだろうね」――。

 これは2014年に米紙ワシントン・ポストのインタビューで、マーク・アンドリーセン氏が語った言葉だ。アンドリーセン氏は、インターネット初期に「Mosaic(モザイク)」というブラウザーを世に出し、その後米ネットスケープコミュニケーションズ(Netscape Communications)を立ち上げた人物だ。現在同氏は、米アンドリーセンホロウィッツという、シリコンバレーを中心としたベンチャーキャピタル(VC)を率いる投資家である。

 アンドリーセン氏はまた、同じ年の米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿「なぜビットコインが重要なのか(Why bitcoin matters)」の中で、「1975年のパーソナルコンピューター、1993年のインターネット、そして2014年のビットコインだ」と述べ、ビットコインとブロックチェーンのポテンシャルをインターネット級の革新的なブレークスルーと捉えている。

 現在、インターネットの影響力を否定する人はいないだろう。しかし、インターネットもその黎明期には様々な批判を浴びていたし、インターネットの影響力を過小評価する人もまた多かった。そこで今回は、インターネットの歴史を振り返りつつ、その歴史を補助線としてブロックチェーンのポテンシャルと課題について考えてみたい。

インターネットの歴史を振り返る

 インターネットのルーツとしてよく持ち出されるのが、1969年に開発が始まった「アーパネット(ARPANET:Advanced Research Projects Agency NETwork)」だろう。ARPANETは全米に分散していたコンピューターをネットワークでつなぐことでデータの移動を簡単に行える仕組みを構築することを目指していた。

 このプロジェクトではパケット通信方式が導入され、後のインターネットの設計に大きな影響を与えた。パケット通信方式の利点は、特定の通信経路に限定することなく、仮にどこかの通信回線が止まってしまっても、別の通信回線がつながっていれば別の経路へと迂回して通信が行える点にある。従来の回線交換方式に比べてより柔軟で分散したネットワークが登場したのである。

 インターネットではオープンな技術開発が同時並行的に行われた点も特徴である。当時、世界的な通信規格を定めようと国際標準機関(ISO)ではOSI(Open Systems Interconnection)と呼ぶ通信規格の策定を進めていた。このOSIは、技術的に厳密な仕様を定めるトップダウン的な規格制定を目指す一方で、インターネットの世界の通信プロトコルはARPANETの開発とともに生み出されたTCP/IPを筆頭に、現場の技術者や開発者が自由かつ「動くものが一番偉い」というボトムアップ的な開発を続けていた。

 インターネットの世界では多くの関係者とオープンに研究・開発を行うコミュニティーが生まれていたのである。その中で生まれたのがRFC(Request for Comment)と呼ぶ通信規格の標準化プロセスの文化だ。このRFCによってインターネットの規格の標準化はオープンな形で進むこととなった。

 大学や公的機関、研究組織を中心に利用されていたインターネットが商用化されるのは1990年代のことである。これは、インターネットが十分な技術の熟成の期間を経て商用化されたことを示している(逆に言えば、インターネットでお金を儲ける方策がそれまではなかなか見つからなかったことの裏返しでもある)。しかし、当初インターネットが商用利用に開放された時点では、まだ現在のような爆発的な利用の広がりがあったわけではない。当初のインターネット上のWebサービスは、性能面での制約やセキュリティーの欠如、規格の乱立などの問題があった。

 実際、1999年にワシントン・ポストに掲載された「13のルートネームサーバーを止めればインターネットは潰れる」という記事は、社会インフラとしてのインターネットの脆弱性を指摘したものであり、その後、インターネットの開発・発展の方向性に影響を与えたものだった。

インターネットは1990年代の「カオス」からの成熟を経て今に至る
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 以上、非常にざっくりだがインターネットの歴史を「ブロックチェーンの補助線」として振り返った。ここでは「柔軟かつ分散したアーキテクチャー」「オープンな標準化・規格策定」「社会インフラとしての自覚」といった点を取り上げた。次いで、社会的・ビジネス的にインターネットがもたらしたものを整理する。ブロックチェーンを理解するうえでとても重要なので、もう少しお付き合いいただきたい。

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