MaaS(マース/マーズ、Mobility as a Service)は自ら手掛けない――。

 トヨタ自動車の技術幹部が明かすMaaSの基本戦略である。あきらめに近い苦渋の選択に思えるが、「MaaSに出遅れた」と評する声が漏れる現状を巻き返す一手を模索した結果だ。

 目指すのは、MaaSを提供するサービス事業者に、通信端末といえるコネクテッドカーや自動運転車、その管理基盤を提供する「プラットフォーマー」になることと決めた。サービス開発が苦手なトヨタの弱みを認めた上で、新時代で稼ぐ仕組みを急いで作る。最大のライバルは、自動運転プラットフォームで先行する米グーグル親会社のアルファベット(Alphabet)だ(図1)。

図1 トヨタの最大のライバルはグーグル
グーグル親会社のアルファベット傘下のウェイモは2018年8月、米アリゾナ州フェニックスの鉄道会社バレー・メトロとの提携を発表した。ウェイモの自動運転車と鉄道を連携するMaaS基盤を開発する。(写真:ウェイモ)
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 巻き返しを図るため、約30兆円を売り上げる世界有数の企業という体面をかなぐり捨てる。2018年10月4日、トヨタ社長の豊田章男氏が「相性が悪いと言われてきた」と認めるソフトバンクと新会社を設立すると発表した(図2)。安全と品質を何より重んじるトヨタと、大きくリスクを取って攻めるのが信条のソフトバンクは“水と油”である。

図2 ソフトバンクに頼るトヨタ
両社は2018年10月4日に提携を発表した。2社が出資する新会社「モネ・テクノロジーズ(MONET Technologies)」を設立する。出資比率で過半を握るのはソフトバンクだ。(写真:トヨタ)
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 しかも「提携発表前に、びんたをくらったようなもの」(トヨタ関係者)。発表前日、トヨタと自動運転開発で競合し、ソフトバンクが約2250億円を出資する米GM傘下のGMクルーズ(Cruise)に、トヨタの宿敵であるホンダが出資すると発表したからだ。

 「ソフトバンクの手の平の上で、トヨタとホンダ、GMが競うのと同じ」(同関係者)と自嘲する声すらある。ソフトバンクにとっては、わずか2日間で日本を代表するトヨタとホンダを自らの「群戦略」(ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏)の一員に加えた形だ。

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