第4回では、成長を加速させる人材育成の仕組みには、(1)3つの観点(個人、組織、個人+組織)があること、(2)個人の観点での仕組みとして技術者自身が自分の強み・弱みを認識し、成長ステップを考え、自己育成を意識しながら業務に取り組むための仕組みをつくることを紹介しました。最終回となる今回は、組織および個人+組織の観点での仕組みについて、使い続けられる運用とともに紹介します。

組織の現状を把握しないと組織力は強化できない

 コンサルティングでお会いするあるマネジャーから、「組織力を強化しないといけない」といった発言を聞くことがあります。

 しかし、何を強化するのかを質問すると、「中間層の底上げ」だったり、「人間力の強化」といったりした曖昧な回答が多く、「関係者を巻き込んでいくリーダーシップがリーダー層に足りない」とか、「プロジェクトマネジャーが自らの経験に基づく判断しかできないため、彼らに未経験の業務を任せられない」などの具体的な問題まで言及されることは多くありません。

 「測れないものは改善できない」という言葉があるように、組織力を強化するには現状を測定することが必要不可欠となります。つまり、組織の観点における人材育成の仕組みとは、「組織の現状を把握し、強化に向けた課題の設定とその解決策を立案できる」ことです。ここでは、弊社で支援した事例を用いながら、その仕組みを構築するポイントを紹介します。

何を把握したいかを明確にしてデータを定義・収集・分析

 1つめは、仕組みの検討を始める前に「現状の何を測定して何を実行するか」、つまり目的と使い方を明確にすることです。「何を当たり前のことを」と思う方がおられるかもしれませんが、何となく仕組みを検討し始める企業は少なくありません。

 実際ある企業では、複数年にわたって様々な情報を収集し、業務経歴や能力評価履歴、従業員満足度アンケートの結果などの膨大なデータを蓄積していました。ところが、蓄積したデータを分析する段階で、「これらのデータから何を読み解いて最終的に何に使うのか」を事前に検討しておらず、後付けでやれることをやろうとしたため、結局データを有効活用できませんでした。

 ここで、組織力強化の取り組みに関する事例をご紹介します。

 ある企業では、組織的な人材育成の柱となる課長に焦点を当て、(1)所属員ごとの育成方針、(2)課の業務遂行に対する所属員全体の強化方針の2つを検討するために、組織の現状を見える化しました(図1)。

図1 組織力把握シート
(出所:iTiDコンサルティング)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら