LINEは2018年9月27日、ブロックチェーン上で発行した仮想的なコイン(トークン)を基盤とした新たな経済圏「LINE Token Economy」構想の詳細を明らかにした。

 同社は韓国のブロックチェーン開発プロジェクト「ICON(アイコン)」と共同で、Pythonベースのブロックチェーン基盤「LINK Chain」を開発し、1秒当たり1000回取引(トランザクション)の処理性能を実現したという。

 同社はこのLINK Chain上で、汎用的に使えるトークンとして海外向けに仮想通貨「LINK」を発行した。日本向けは規制の関係で、仮想通貨ではない独自ポイント「LINK Point」を発行した。

 これらのトークンが新経済圏を循環する血液となる。ブロックチェーンと連携した分散アプリケーション「dApps」を通じ、参加ユーザーへの報酬などの形で配布・流通させ、サービスを盛り上げる役割を果たす。dAppsは2018年末までに「未来予想」「Q&A」「商品レビュー」「グルメレビュー」「スポットSNS」の5つを公開する計画だ。

「LINE Token Economy」の概念図。LINK Chain上でデジタルトークンを発行し、トークン取引を伴うアプリケーション「dApps」を運用する
(出所:LINE)
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 一見すると通常のポイントサービスの延長に見える「LINK Point」をブロックチェーン上で運用する利点は何か。LINE Blockchain Labエンジニアの那須利将氏に聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経 xTECH/日経コンピュータ)


dAppsに参加したLINEユーザーに配布されるLINK Pointは、LINEポイントに変換して決済などに使えるといいます。あえて聞きますが、ブロックチェーンを使わず従来のLINEポイントで5つのサービスを運用してもよかったのでは。

 既存のLINEポイントと比べたLINK Pointの特徴は、透明性の高さにあると考えています。

LINE Blockchain Labの那須利将氏
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 発行するトークンの総量や、どのdAppsがトークンを持ち、どのようなロジックで配布したのか、ブロックチェーンを通じて全て見えるようになっています。透明性を通じてサービスへの信頼を高めるのがLINK Chainのコンセプトです。

LINEが運用するブロックチェーン上でのトークンのやりとりを表示するサイト。取引のスマートコントラクトはPythonで記述している
(出所:LINE)
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 スーパーに置いている野菜に生産者の顔が載っている時代です。「透明性はなくていい」という人もいるでしょうが、あって困るものでもありません。プラスしかないならオープンにやっていこう、というのが我々のスタンスです。

今回公開したサービスはQ&Aやレビューなど、いずれもUGC(User Generated Contents)に属するサービスです。ユーザーの貢献度に応じたトークンの配布などをスマートコントラクト(ブロックチェーン上で自動処理するスクリプト)で実行するとのことですが、手作業による柔軟な運用ができなくなるなど、運用の難度は高そうです。

 LINEが2018年4月、韓国でブロックチェーン技術の子会社「Unblock」をジョイントベンチャーとして立ち上げた理由は、実はそこにあります。

 トークンエコノミーをうまく動かすには、参加するユーザーのモチベーションを高めるインセンティブ(報酬)を用意し、参加ユーザーを増やす必要があります。このインセンティブの設計にも透明性の高さが求められます。トークンを配布するロジックを示したスマートコントラクトはユーザーに公開され、配布の内容も分かります。サービス提供側も恣意的な運用はできません。

 こうした事前ルールに基づく報酬の仕組みは、アプリケーション開発の担当者に「頑張って作ってください」と言うだけで設計できるほど甘いものではありません。トークンをどう発行し、どう配布し、どう循環させるか。エコノミーをうまく回す仕組みを考える「エコノミスト」が必要です。

海外で流通させる仮想通貨「LINK」に基づくトークンエコノミーの概念図。LINKは10月16日に同社が運営する仮想通貨交換所「BITBOX」でLINKの取り扱いを始める。国内で流通させる「LINK Point」は、仮想通貨や法定通貨でなくLINEポイントに変換可能にする
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 Unblockの在籍者は6人で、経済学の知見からトークン設計を担う専門家も含まれます。アプリケーション開発の担当者にアドバイスしながら、トークンエコノミーを設計しています。

なるほど。従来のUGCサービスは、運営側がきめ細かくコミュニティに介入することが前提で、手間がかかりすぎるイメージがありました。ブロックチェーンをベースとしたトークンエコノミーでは、事前のルール作りやインセンティブ設計がより重要になるということでしょうか。

 まさにそうです。トークンエコノミーは「担当者が手作業で調整する」という発想とは根本的に異なるサービス設計が必要になります。そうした発想を持ったエコノミストを雇うか、あるいは自分たちで育てることが、トークンエコノミーを活性化させる有効な策の1つと考えています。

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