2018年12月4日、東京・港区の赤坂インターシティコンファレンス「the AIR」で「木材活用フォーラム2018」が開催された。同フォーラムで開かれた3つのパネルディスカッションの概要を紹介する。最初のテーマは「木造建築の技術を考える」。日経BP総研の小原隆の司会で、三菱地所の海老澤渉氏、竹中工務店の小林道和氏、桜設計集団の安井昇氏と共に議論を行った。

右から、桜設計集団の安井昇氏、三菱地所の海老澤渉氏、竹中工務店の小林道和氏、日経BP総研の小原隆(写真:渡辺 慎一郎)
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パネリスト(五十音順)
  • 三菱地所 CLTユニット主事 海老澤渉氏
  • 竹中工務店 木造・木質建築推進本部 副部長 小林道和氏
  • 桜設計集団代表、早稲田大学招聘研究員、NPO法人team Timberize副理事長 安井昇氏
モデレーター
  • 日経BP総研 社会インフララボ 上席研究員 小原隆

2025年には20階建て木造を

小林:竹中工務店の木造・木質建築推進本部では、「木のイノベーションで森とまちの未来をつくる」をミッションに、建設分野の木材利用による循環型社会の実現を目指しています。木造・木質建築を推進することによって木材の需要を高め、地域振興やまちづくり、さらには林業の活性化までをサスティナブルに経済循環します。この「森林グランドサイクル」の構築によって、社会に役立ち企業価値を高めていくことをビジョンとして活動しています。

竹中工務店木造・木質建築推進本部副部長の小林道和氏(写真:渡辺 慎一郎)
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 ゼネコンとして大規模建築を手掛けてきたノウハウを生かして、規模や高さのある建物の木造・木質化にチャレンジしており、計画中のものも含めてこれまで14件のプロジェクトを手掛けてきました。現在、三菱地所との協働で、仙台市で「(仮称)泉区高森2丁目プロジェクト」を建設していますが、日本初のCLT(直交集成板)を床材として利用した高層建築物となります。

 こうした技術開発の実績と開発により、2025年には20階建ての木造高層建築を実現したいと思っています。今のところ2時間耐火までの技術があるので、高層建築の木造・木質化を進めていきたいと考えています。

竹中工務店が開発した2時間耐火仕様の耐火集成木材「燃エンウッド」を使用し、試設計した高層木造建築「Alta Ligna Tower(アルタ・リグナ・タワー、ラテン語で“高い木々”)」のイメージ図(資料:竹中工務店)
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アルタ・リグナ・タワーは20階建ての高層建築で、7~20階までの柱や梁に燃エンウッドを適用。2025年の実現を目指す(資料:竹中工務店)
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CLTを上手に使う

海老澤:三菱地所グループは建築を通して街づくりをする総合デベロッパー会社です。より良い開発のためには木とうまく付き合っていく必要があると考え、2年前に研究開発ユニット「CLTユニット」を立ち上げました。グループ内には、木造の設計ができる三菱地所設計や、ツーバイフォーの戸建てを主体とした三菱地所ホームがあり、これらのリソースを活用してより効果的なアセット開発を目指しています。現在、仙台と沖縄、2つの案件が施工中です。

三菱地所CLTユニット主事の海老澤渉氏(写真:渡辺 慎一郎)
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 仙台の案件は、泉パークタウンという弊社が開発・分譲したニュータウン内で、CLTを使った10階建ての賃貸マンションです。海外と違い、日本は大きな地震があるため、CLTだけで高層建築物をつくるのは困難です。そのため、高層や超高層でCLTを上手に使うための実証的なプロジェクトとして取り組んでいます。

 床を支える間柱で竹中工務店の「燃エンウッド」を採用するなど、構造躯体の約4割を木造化しました。CLT床の施工は、ワンフロア当たり24枚を配置するのですが、3~5分程度で1枚分を敷くことができるので、3時間もかからずに完了しました。一般的な鉄骨造ですと2〜3日かかってしまうため、CLTの施工面での省力化の貢献は大きなものだと感じています。

2時間耐火仕様の耐火集成木材「燃エンウッド」やCLT床、CLT耐震壁を採用した木造中高層建築「(仮称)泉区高森2丁目 プロジェクト」(資料:三菱地所)
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「(仮称)泉区高森2丁目 プロジェクト」は、構造の一部にCLT材を組み込んだ。10階を超える中高層木造建築物においてCLT材を使用するのは日本初。2019年2月に完成する予定(資料:三菱地所)
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木造は性能規定化で変わる

安井:私は個人で設計をしていますが、大学で研究や実験などを行いながら、建物を高層化する際に木をどう使っていくかという普及啓蒙活動も行っています。

桜設計集団代表、早稲田大学招聘研究員、NPO法人team Timberize副理事長の安井昇氏(写真:渡辺 慎一郎)
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 建築物を木造で高層化、大規模化すると防火などの法律が障壁になります。18年に建築基準法の一部が改正され、19年に施行されますが、木造建築物などに係る制限が合理化される予定です。「21条」の高さや面積の制限、「27条」の用途の制限、「61条」の防火地域、準防火地域の制限、倒壊抑制、避難安全、延焼防止などについては全て性能規定化されることになります。

2018年6月27日公布の建築基準法の改正内容。施行は1年以内(資料:安井 昇)
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建築基準法の改正によって、木材を現しにしながら火災安全性を確保することが可能になる(資料:安井 昇)
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 これらの合理化によって、木造の中層共同住宅などの整備や、防火改修・建て替えなどが推進されていくでしょう。これまで木材を使用した中層建築物は少し難しかったのが、今回の法令改正によって6階建てあたりまで伸ばせそうです。みなさんがやりたいと思っていることの8割くらいはできるようになってくるのではないでしょうか。

 法令改正によって今後、耐火建築物と同等の性能を有する建築物をつくるためには、1時間を超える準耐火構造が必要となります。消防隊員が完全に消火しきるまで建物が建っていて、消し終わっても建ち続けられることを目標にします。その結果、純木造で4~5階建てくらいまで建築できるようになりそうです。それ以上になると純木造でなく、鉄⾻などとの混合構造になるかもしれません。

準耐火建築物としての性能を高めることで、厳格な耐火仕様でなくても高層化・大規模化が可能になり、木造を採用する余地が生まれる(資料:安井 昇)
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 以下は、NPO法人team Timberizeが描いたスケッチです。12階建ての建物で、3層ごとに鉄筋コンクリート造あるいは鉄骨造の強固な躯体のメガストラクチャーをつくり、その中に木造の3層分をはめ込んでいます。木造3階建てというと、工務店なども含め、プレイヤーの多い分野だと思います。躯体を大きな企業につくってもらい、内部は小さな企業も含めて参加できるようなビルをつくっていくというのも一つのやり方なのではないかと思います。

12階建ての中層ビルのイメージスケッチ。3層おきに鉄筋コンクリート造または鉄骨造による強度の高い躯体でメガストラクチャーを構成し、その中に木造で3層分をはめ込む形式(資料:NPO法人team Timberize)
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