都市木造を当たり前にするために

腰原(東京大学)
設計の手間はかかったのか。

栗田(竹中工務店)
木の建築については、まだまだ試行錯誤の段階だ。例えば、内装の下見板張りについても、とめ方や割り付けなど、工業製品ではない素材であることでさまざまな検討が必要だった。

腰原(東京大学)
木造・木質化の設計の経験を踏まえたことで、次回は慣れて進められそうか。

栗田(竹中工務店)
このプロジェクトを通して、木についての知識や経験を積むことができた。そういう意味では、いくらか慣れたということはある。木造・木質化については、別のプロジェクトでも取り組んでいきたい。都市の中での木造建築は、純粋な木造というのではなく、一部木造の混合構造でもいいと思う。現時点では、木を使った新しい建築の可能性を探っている段階なのだろう。

腰原(東京大学)
竹中工務店でも、木造・木質化について、プロジェクトごとに別々の設計者を当てて取り組んでいると聞く。社内でノウハウの蓄積や横の情報交換を行っているのか。あるいはあえて可能性を探るために、別々の設計者で違うアプローチを行っているのか。

栗田(竹中工務店)
体系立てて、情報交換やノウハウの蓄積を行っているわけではない。ただ、社内でプレゼンテーションの機会をつくり、実績や苦労を他の社員に伝えるようにしている。

腰原(東京大学)
講演会などで、こうした先進的なプロジェクトの紹介があっても、良い話ばかりが強調されて、本当に苦労したことにはなかなか光が当てられない。どういう情報を出していくと、後に続いて木造・木質化に取り組む設計者が迷わないようにできるのだろうか。

小林(竹中工務店)
どちらかというと構造設計については情報を共有しやすい。意匠設計者は、その性格から独自に工夫したいと考える傾向があって、ディテールの共有はあっても、木造・木質化を実現できた設計の考え方まで共有するということになりにくい。

腰原(東京大学)
都市部の建築の木造・木質化を普及させていくには、ハードルが高い面があり、簡単にできる方法をつくっていく必要があると思う。新しい試みだけでなく、技術面などを振り返って地固めしてくれるような存在が必要ではないか。

小林(竹中工務店)
情報発信はメディアの役割も大きいだろう。

柳瀬(三菱地所)
普及してコストが下がってくれば、手がけ始める第2集団が出てくるのでは。

腰原(東京大学)
都市木造についてのトップランナーは少数いるのだが、このままいくと広がるスピードが遅く、普及が遅れるように思う。

柳瀬(三菱地所)
当社はデベロッパーとしてはいち早く取り組んでいるが、最近は他のデベロッパーからヒアリングされるようになってきた。

廣瀬(廣瀬隆志建築設計事務所)
校舎について、最後にもう一つ質問がある。床を木造にしなかった理由は。遮音性能の問題か。

小林(竹中工務店)
床をRC造にしたのは、振動・遮音対策に加えて、構造設計における剛床仮定の導入といった理由もある。

建築概要

  • 敷地面積:約2万185m2
  • 建地面積:約7300m2
  • 延べ面積:約2万4500m2
  • 構造:鉄筋コンクリート造 一部 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造
  • 建物高さ:地上5階建て(約25m)
  • 用途地域等:第一種住居地域、防火地域、臨海副都心有明北地区計画区域
  • 建蔽率・容積率:60%、200%
  • 建物用途:学校(小学校、中学校)
  • 基本設計者:久米設計
  • 実施設計者:竹中・久米特定建設工事共同企業体
  • 工事監理者:久米設計
  • 施工者:竹中工務店
  • 工事期間:2016年4月1日~18年2月28日
  • 開校時期:2018年4月
2018年度第2回「CLTを含む中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案」検討委員会

本委員会は、広がり始めた建築物の木造化、木質化をさらに普及・波及させるため、需要者や供給者など種々ステークホルダーにとって実務に役立つ知識や技術を集約し、発信することを目的とする。

委員(敬称略)

伊藤雅人(三井住友信託銀行 不動産コンサルティング部 環境不動産 担当部長)、海老澤渉(三菱地所 住宅業務企画部 CLTユニット 主事)、腰原幹雄(東京大学 生産技術研究所木質構造デザイン工学 教授)、小林道和(竹中工務店 木造・木質建築推進本部 副部長)、佐野惣吉(住友林業 市場開発部 副部長)、樋口智治(ローソン 開発本部 建設部 シニアマネジャー)、柳瀬拓也(三菱地所 住宅業務企画部 兼 新事業創造部 主事)

オブザーバー(敬称略)

廣瀬隆志(廣瀬隆志建築設計事務所 所長)

林野庁林政部木材産業課(敬称略)

平山翔一(木材製品技術室 木材製品調査担当専門職)

事務局

小原隆(日経BP社 日経BP総研 社会インフララボ 上席研究員)、村島正彦(日経BP社 日経BP総研 社会インフララボ 客員研究員)、米倉肇(日経BP社 技術メディア広告部 部次長)

■変更履歴
図版の一部を差し替えました。 [2018/12/26 11:30]