木造・木質化のメリット、デメリットを聞く

 現場見学の後、江東区教育委員会事務局学校施設課施設工事第一係長の鈴木肇氏、竹中工務店東京本店設計部第8部門設計2グループ副部長の栗田献氏を交えて、検討委員会の委員らが質疑や意見交換を行った(以下、敬称略)。

小原(日経BP総研 社会インフララボ)
校内の掲示など、木造・木質化したことで何らかの配慮が生じているか。

鈴木(江東区教育委員会)
耐火性能への影響はないだろうが、燃エンウッドの柱には原則、画びょうやビスなどは刺さないようにお願いしている。

小原(日経BP総研 社会インフララボ)
校舎を木造・木質化したことで、児童・生徒の生活に違いが生じているか。

鈴木(江東区教育委員会)
視察に訪れた他校の先生からは「生徒たちが木に親しんでいる」や「木があることで生徒たちが落ち着いているように感じる」といった意見があった。

腰原(東京大学)
本当は木でできるところを、あえて木でつくらなかったところはあるのか。通常、木質化というと、あらゆる部分を木で見せようとするものだが、この建物ではそこまで徹底していないように感じた。

栗田(竹中工務店)
構造としての木造部分は現しで構成したが、木質化については、下地がRC造の壁であっても全て木で覆うような「山小屋風」は避けようと考えた。都市の中の建築でもあり、実施設計における共同設計者の久米設計とも、全てを木で覆うことはあえてしないように心がけた。

児童・生徒が長い時間を過ごす普通教室については、天井を含めてふんだんに木を使って、RC造で構成されている特別教室については木をあまり使わないなどメリハリをつけた。木を使いたかったが、なんらかの制約で木を使えなかったということはない。普通教室の鋼製建具については、機能的なことなどを考慮し、区とも相談して材料を決めた。

腰原(東京大学)
建物の長期の利用という観点では、たとえば将来、学校以外の用途で使うことになった場合、木を使っていることで法的に難しいところはあるか。

栗田(竹中工務店)
あまり思いつくところはない。普通教室のつくり方についても、将来的に用途が変わっても柔軟に対応できるような構造配置を心がけた。今後、どのような用途に転用されるかまで想定していないが、長期にわたって柔軟に使うことが可能なつくりとしている。

佐野(住友林業)
建物全体での木材の使用量はどれくらいか。

鈴木(江東区教育委員会)
木構造の燃エンウッドの使用量は約414m3だ。木質化の仕上げや家具などで約752m3を使っている。江東区では、公共建築物などにおける木材利用の目標を定めており、新築または改築の際には、延べ面積当たり原則0.008m3/m2以上を満たすこととしている。これに対して、本校では約0.048m3/m2を使っており、目標値の約6倍となっている。

柳瀬(三菱地所)
木造の長期にわたるクリープなどはどう考慮しているのか。

小林(竹中工務店)
この建物は木構造部分が4層となる。柱の軸力や梁の荷重などによる変形やクリープの影響を想定した設計を行っている。

柳瀬(三菱地所)
木質化について、床や壁、柱が目立つ。天井については、共用部の廊下・ホール以外はあまり木質化していないようだ。デザインの考え方として、木の目視率のようなことを考えたのか。

栗田(竹中工務店)
ご指摘のように天井にも木を使うことはできる。ただ、木は使いすぎると、建物の中が暗い印象になる。さきほど「山小屋風」という言葉を使ったが、木を使いすぎず、メリハリを付けた方が良い、と考えた。

柳瀬(三菱地所)
木質化したことで、通常の施設と違って維持管理上、手間やコストがかかるようなことはあるのか。

鈴木(江東区教育委員会)
引き渡し時に、施工者から特別そういった注意は受けていない。ただ、内装材では木材特有の反りや割れなどはあるだろうが、構造躯体にはそういうことはないと考えている。また江東区としても、木質化の経験が豊富なので、大きな問題はないという認識だ。

伊藤(三井住友信託銀行)
基本設計段階から、木構造は燃エンウッドを使うことありきだったのか。

鈴木(江東区教育委員会)
久米設計が行った基本設計ではそこまで指定していなかった。実施設計は、久米設計と竹中工務店のJVで行われることになり、耐火性能を満たす木構造として燃エンウッドを使うことが決まった。

伊藤(三井住友信託銀行)
使っている木材の、国産と外国産の割合は。

鈴木(江東区教育委員会)
使用した木材の約85%は国産材だ。

小原(日経BP総研 社会インフララボ)
木材は、国内各地から集めようという考えだったのか。

小林(竹中工務店)
木の使用量が多かったので、可能な限り国産材を条件に調達した。特に地域の多様性に配慮したというわけではない。

小原(日経BP総研 社会インフララボ)
児童・生徒や教職員向けに、この建物の木造・木質化について説明しているのか。

小林(竹中工務店)
2018年4月に開校したばかりで、今までそういう機会はなかった。12月の記念式典の前に、校長からこの建物について竹中工務店から生徒を対象とする出張授業をしてほしいという依頼をもらっており、そこで説明したい。

樋口(ローソン)
そもそも木構造を採用した理由を教えてほしい。

鈴木(江東区教育委員会)
江東区は木場もあったことから、公共建築物に木を積極的に使うことを目標としてきたことが背景にある。学校建築について、これまでも木質化は行ってきたが、構造として木造を採用したのは初めての経験だ。

また、近接するオリンピック体操競技場も木を使う。海外からの来訪者が多い中で、木を使った建物で江東区を知ってもらおうという意図もある。

海老澤(三菱地所)
最初から木造ということで考えたということか。

鈴木(江東区教育委員会)
建物規模が大きいことから、全てを木造にするという考えはなかった。あくまで基本設計で、木造を一部含む混合構造という提案があった。木造に初めて取り組むこともあり、コストは余裕をもって、通常の建設費よりも2割増しで検討してきた。コストの妥当性については検証している。

シンボル的には、外から見て木を使っていることを感じてもらうために、外装も人工木材ではあるが木質化した。

小原(日経BP総研 社会インフララボ)
埋め立て地であり、軽い木造による杭や基礎でコストダウンの効果はあったのか。

小林(竹中工務店)
杭や基礎が少なく済むことはあっただろうが、それが大きなコストダウンにつながるまではなっていない。

腰原(東京大学)
共用部の回廊について、どのような木の使い方を考えたのか。

栗田(竹中工務店)
いかに子供のための空間をつくっていくかということを心がけた。そういう点では、普通教室から共用部の木でできた回廊が見えるということを意識して、木質化する計画とした。