木造建築の事業フロー

木造建築では伐採、製材、乾燥という工程を想定したスケジューリングが求められる(資料:木造公共建築の実現に適した事業フローについて検証/法政大学網野研究室・東洋大学浦江研究室の共同研究)
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新築需要が減る中、企業や自治体は木造建築を何度も発注できる機会が減っています。それではノウハウが蓄積されませんね。

 その通りです。設計者は木造の経験を積む機会が少なくなり、木材の調達も商社や施工者に任せがちになり、木材の流通や加工について知らなくなります。そのため、素晴らしい建築でも、歩留まりの悪い不経済な木材の使い方になるケースが多く見受けられます。これでは林業や製材工場に負担を掛けてしまいます。

 戦後の歴史を振り返れば、ある意味仕方がないのかもしれません。これまで日本は原料調達や加工などを海外の安価なところにアウトソーシングして経済を成長させてきました。その結果、素材生産や流通といったことに関心が向かなくなったのだと思います。

どうすれば設計者が木造建築の理解を深めることができますか。

 きちんと木材の情報を提供できるコーディネーターのような役割を増やさなければならないと考えています。日々の仕事が忙しい設計者に、「山や製材工場まで木を見に行きなさい」と言っても、実際は難しいでしょうから。

 川上から川下まで木造関連の産業は構造が複雑で、地域によっても異なります。大工によっては言うことが違うし、生半可に学ぼうとして誤解を生むリスクもあります。だからこそ、木材活用のコーディネーターが役立ちます。

 コーディネーターは第3者的な立場が望ましいと思います。特定の製品に偏らない総合的な視点を持つ人や仕組みが求められます。

コーディネーターは木材から建築までを網羅した知識が必要ですね。でも、そうした学問はありません。

 そうなのです。誤解を恐れずに言うと、意匠設計を学ぶ人は木構造や材料学に詳しくなく、構造設計を学ぶ人は木材産業が分からず、林業を学ぶ人は建築を知らない。それぞれ専門分野が分化していて、各分野の知見を融合させるような場がありません。

 できれば木造建築を手掛ける設計者は、林業や製材の仕組みくらいは分かっておいてほしい。でも、今の高等教育のカリキュラムの中では時間が足りません。地域ごとに仕組みが違っていたり体系化された資料がなかったりするため、長い時間をかけて丁寧にヒアリングして知見を得る必要があります。

 それら全てを設計者に委ねるのは現実的ではないでしょう。そう考えると、やはり早急にコーディネーターを育てなければなりませんね。(後編に続く