設計者が木に価値をつける

管理が行き届かない森林が増加している。間伐が実施されなければ、幹や根の成長が望めず、日光が遮られることによって下層の植生などが育たなくなる。その結果、降雨によって表土が流出しやすくなるなど、森林の持つ土砂災害防止の機能が低下する(写真:本藤 幹雄)
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建築側は何をすべきでしょうか。

 今、木に最も高い価値をつけているのは建築事業者、あるいは設計者です。林業を伸ばしていくには、どうやって彼らに木をたくさん使ってもらうかが大きなポイントになります。

 これは地球環境問題にも関わることです。単純に木を売ってお金をもうけるだけじゃなく、木材を動かすことで環境も動かす。温暖化の抑止や持続可能性のある社会を考えると、必ず向き合わざるを得ません。

 今後さらに山側がコスト高になっていった場合、「俺の代で山を終わりにする」と言って、所有者が全部木を切り倒して現金化するリスクもある。そうなると森林は荒廃し、水環境は悪化してしまう。

森林に木造建築が果たす役割は大きいですね。

 その通りです。一方、森林に対する市民の意識はずいぶん変わってしまいました。昔は、エネルギーも肥料も森からもらっていましたが、今、都市部では森林とのつながりが切れています。

 中山間部以外では、日々の生活において森林を意識する人はほとんどいないのではないでしょうか。

 だから都市部の人にとって、山は「花粉の元凶」などといった意味合いが強く、資源であるというイメージを持ってもらえない。林業に対しても、危険な作業というイメージがつきまとって就職の人気が低い。

将来像をどう描いていますか。

 現在の林業には、「どんな山が必要なのか」「森林資源をどのように活用していくのか」といった根源的な問いに対する答えがありません。これからは山の在り方を突き詰めて考えなければならないのです。

 希望もあります。今後、世代交代で若い人材も林業に入ってくる。テクノロジーも日々進化している。

 それらの力を活用して、山、製材、建築が意識の統一を図り、安定した生産・流通体制を整えることが重要だと考えています。なぜなら、それが⽊材の新たな需要を喚起し、森林の資産としての価値を⾼めるからです。