都心から約1000km離れた東京の世界自然遺産・小笠原諸島。その父島にいるウミガメと東京にいながら“触れ合う”という、まるで映画の世界を実現するイベントが2018年9月に開催された注1)

 父島に配置したロボットを遠隔操作してウミガメに餌をあげたり、触れ合ったりするイベントだ。このロボットは、体験者の動きに連動して頭や腕が動く。餌のキャベツをいけすに放り込む動作をすれば、ロボットがそれをやり、ウミガメが食べに集まってくる様子を見られる。自分の手を動かしてウミガメの甲羅を触るような動作をすれば、実際にロボットが甲羅を触り、硬くてザラザラした感触が自分の手にも伝わってくる。

 実は、このウミガメとの触れ合いは、港区の竹芝ふ頭で行われた。竹芝ふ頭と父島は船での移動に片道24時間もかかる。しかも、運航は1週間に1便しかない。そんな環境にある父島を、VR(Virtual Reality:仮想現実感)と遠隔操作ロボットを使って観光するという、距離と時間の制約をなくす次世代の旅行体験が現実のものとなったのだ。

注1)このイベントは、東京諸島観光連盟小笠原村観光局(東京・港)、ロボットベンチャーのTelexistence(東京・港)、竹芝エリアマネジメント(東京・港)、JTB(東京・品川)、KDDI(東京・千代田)、CiP協議会(東京・港)が共同で開催した(PDF形式のニュースリリース)。
図1 VR機器を使って小笠原諸島の父島にあるロボットを東京・港の竹芝ふ頭から遠隔操作している様子
(撮影:日経 xTECH)
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 イベントの参加者は、VR機器を装着して父島のロボットを遠隔操作する。体験が始まると、父島の小笠原海洋センターにいるロボットのカメラを通じて見た、父島の海の様子が目の前に映し出される。ロボットの隣には案内役の女性がいて、体験者が頭部を回して女性の方を向けば、ロボットの頭部も連動して動く。女性との会話では、リアルタイムに質問の受け答えも可能だ。ロボットの腕の動きや手の開閉も体験者と連動するので、女性と握手もできた。

 しかも、ただ握手の動作ができるだけではない。ロボットの手を握られた感触が、体験者自身の手にもフィードバックされるのである。ロボットが触った感触を離れた場所でも感じられることで、ウミガメとの触れ合いがより価値のある体験に変わるのだ。

 この遠隔旅行体験を実現するのが「テレイグジスタンス(遠隔存在感)」と呼ばれる技術だ。

図2 遠隔操作しているロボットがウミガメの甲羅を触っている様子
(撮影:日経 xTECH)
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