本連載の第12回では、自動車および家電などの普段我々が利用する製品・サービスに関わるセキュリティーについて、[1]自動車を取り巻くセキュリティー脅威の変化と多様化する対策、[2]製品のセキュリティー機能に関わる客観的なお墨付き(認証)の重要性、[3]自動車業界におけるセキュリティー認証の取り組み、に着目して解説してきた。特に[3]については、認証制度の取り組み主体である「WP29」(自動車基準調和世界フォーラム)の組織構成やミッション、活動内容などについて解説した。

 続く第34回では、WP29の根幹となる2つのトピック、企業目線の「レゾリューション(Resolution)」と、運営側目線の「レギュレーション(Regulation)」について、具体的な規制と完成車メーカーにとって想定される懸念について述べた。

 今回は、企業目線の視点を変えてみる。これまで完成車メーカーの視点で考察してきたが、果たして「サプライヤー」から見た場合、WP29によって何が変わるのか、何が要求されるのか。以下では、自動車開発にとって欠かせない存在であるサプライヤーの視点から、セキュリティー要件として求められる具体的な対応事項を解説する。WP29がいかに自動車業界全体にインパクトを与えるかが浮き彫りとなるはずだ。

完成車メーカーのための認証制度?

(筆者ら)は、自動車セキュリティーに関するコンサルティングの依頼を様々な企業から受けている。役員クラスの方々とWP29に関する意見交換する機会も増えている。特に完成車メーカーの経営層はWP29に多大な関心を寄せている。

 一方、サプライヤーのWP29に対する反応は、やや鈍い印象がある。国内の自動車セキュリティーに関する外郭団体を中心にWP29への取り組みは進んでいるが、個別の企業レベルで見ると、WP29の解釈・整理・対策検討などを進めている主要サプライヤーも存在するものの、全体としては取り組みはまだ本格化していない。

 その理由として大きいのが、“WP29は完成車に対するオーナーシップを持つ完成車メーカー目線の認証制度である”との理解だろう。端的に言うと「対岸の火事」と認識している印象だ。

 ではサプライヤーにとって、WP29とは本当に「対岸の火事」なのだろうか。以下ではWP29の記載内容を冷静に俯瞰(ふかん)し、サプライヤーとWP29の関係を読み解いてみる。

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