ダイキン工業の成長を支える海外市場。競合企業がひしめく中で、うまく成長に結び続けられる秘密は何か。同社グローバル戦略本部長で販売を担当する峯野義博氏を直撃した。

強力なライバルが競争を繰り広げる世界の空調業界でダイキン工業は成長し続けています。最近では新興国での伸びが著しい。なぜでしょうか。

峯野氏:嘘やろ? と思います。2019年3月期(2018年度)に当社の売上高が2兆4811億円に、営業利益が2763億円に達したことを、です。今でこそ「世界のダイキン」などと言われていますが、私が入社した40年前は「堺(大阪府堺市)のダイキン」でした。売上高は1500億円くらいだったと記憶しています。40年でざっと17倍に伸びていることになります。

 時価総額は、最近は少し減りましたが、依然として売上高よりも高い水準を維持しています(2019年6月10日時点で売上高の1.61倍)。時価総額が売上高を超えるということは、それだけ将来の期待が大きいという評価を市場から頂いているということです。日本の大手企業では珍しいと思います。

売上高に対する時価総額の割合
2019年6月10日時点で計算した。日本の大手企業の中で1倍を超える企業は少ない。(出所:日経 xTECH)
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 不思議に思うのは、当社には基本的にルーム(家庭用エアコン)とスカイ(店舗用エアコン)、ビルマル(業務用エアコン)の3つの商品しかないからです。それなのに、ここまでの売上高や時価総額がある。ホンマか? と。

 しかし、考えてみるとエアコンは1部屋に1台入ります。4部屋あれば4台。しかし、冷蔵庫や洗濯機は一家に1台でしょう。テレビでもせいぜい2台くらいではないでしょうか。単価が比較的高くて、台数(需要)が多いという利点がエアコンにはあるのです。

 しかも、3商品ともシンプルな構造です。大きさは違っても、熱交換器と圧縮機、ファンモーター、PCボード(制御盤)と、全く同じ原材料を使っている。小麦粉にキャベツ、水、ソースでできる大阪名物の「粉もん」みたいなものです。その上、新興国のエアコンの普及はまだまだこれから。据え付け・サービスも必須の製品です。これは儲(もう)からないとおかしい。ラッキーな業界にいると言えるかもしれません。

ダイキン工業 常務執行役員 グローバル戦略本部長 峯野 義博氏
(写真:日経 xTECH)
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自ら造り、自ら売る

しかし、そうした条件は競合企業でも同じはずです。

峯野氏:当社は販売の自前主義、すなわち「直売(ちょくばい)戦略」を採っています。「市場最寄(もより)化戦略」で市場の近くで造った製品を、顧客に自ら売る。そのために、世界に10万を超える自前の販売店を持っています。こんな会社は他にどこにもありません。

ダイキン工業の「直売戦略」を支える世界の販売店網
世界に10万を超える販売店を持つ。(作成:日経 xTECH)
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 直売であれば、販売店に対して我々メーカーが「こう説明して、こう売ってください」と直接指導することができます。当社は付加価値を高めた「差異化商品」を積極的に造っています。こうした独自製品は顧客への説明や売り方が難しくなりますが、造った我々が各販売店に直に教えるのですから問題はありません。

 これに対し、代理店を使った販売では、差異化技術などを搭載して少しややこしい商品になると、顧客にきちんと説明できずに売りにくくなってしまいます。なぜその製品を造ったのか、どのような技術なのか、どのようにすれば使いこなせるのか、どのような顧客を主な対象としているのか。これらは造った“プロ”でなければ分かりにくいのです。

 直売では、強い人間関係も築けます。販売店の親も知っていれば子も知っている。それが10万店以上もあるのです。努力していることが分かれば、資金繰りが大変なときには助けることもある。一方で、きちんと競争原理を働かせて地域内で競争も促しています。こうした取り組みで、販売店がダイキン工業のファンになってくれてもいます。

 当然、利益率も高い。代理店に払う販売手数料が要らないからです。直売戦略と市場最寄化戦略はダイキン工業の「命」とも言えるものなのです。

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