この17年で売り上げを4倍超に伸ばし、その8割を海外で稼ぐダイキン工業。なぜ、世界で売れる製品を開発できるのか。同社の開発を率いるダイキン工業取締役副社長執行役員でグローバル戦略本部・生産技術担当の冨田次郎氏を直撃した。

2000年以降、ダイキン工業はグローバルで製品の売り上げを伸ばしてきた。なぜ、世界で売れる製品を開発できるのか。

冨田氏:危機意識が強いと思う。当社は空調機専業メーカーだ。空調機に関しては大手総合家電メーカーよりも一歩でも半歩でも先駆けた製品を生み出さなければ、競争に勝てない。この危機意識を常に持って開発を進めている。

 総合家電メーカーにとって、エアコンの優先順位はテレビ、冷蔵庫、洗濯機に次いで4番目ぐらいだったのではないか。しかし、我々には優先順位は上にも下にもエアコンしかない。このことは、グローバルを含む全従業員が十分に認識しているはずだ。

 現に、90年を超える創業の歴史を振り返っても、1937年の日本初のフロン式冷凍機の開発に始まり、1951年の日本初のパッケージエアコン、1982年の日本初のビル用マルチエアコン、1999年の世界初の無給水加湿家庭用エアコンなど、これまで常に「日本初」や「世界初」を狙って新製品開発に臨んできたし、今なおそうしている。

 これが日本の開発拠点からだけではなく、世界の各開発拠点からも出てくるようになってきたのが、我々の今の強みだ。例えば、中国初の住宅用マルチエアコンや、欧州初のヒートポンプ式温水暖房機、(日本と中国を除く)アジア初の冷房専用インバーター家庭用エアコンなどだ。

ダイキン工業 取締役副社長執行役員 グローバル戦略本部・生産技術担当 冨田 次郎氏
(写真:日経 xTECH)
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危機意識が開発の意欲を高めることは理解できるし、世界初や日本初の製品は確かに話題性がある。だが、「初」だからといって売れるとは限らないのではないか。

冨田氏:我々は、顧客にとっての価値、すなわちユーザーメリットを提供することに徹しているつもりだ。そして、そのために重要なことが2つあると私は社員に語っている。1つは「カスタマーイン」だ。市場に近い所で聞き、考えて、発想しながらその地域で求められる製品を現地主体でスピーディーに開発することだ。さらに言えば、その地域で販売する製品はその地域で生産することを原則としている。こうすれば、季節商品であるエアコンを市場に供給するまでのリードタイムを短縮できるだけではなく、為替変動のリスクや、気候や経済変動による在庫リスクを緩和できるからだ。

 もう1つは、マーケティングにおける「なぜの追求」だ。マーケティングで自分の意思を持たずに漠然と顧客の声を聞いても、真の顧客ニーズはつかめないのではないか。私自身が製品開発でそれを経験した。逆に、見えなかった顧客ニーズが「なぜ?」と思うことから発見できることも、経験から学んだ。「なぜ、この地域は他の地域とは違う空調システムになっているのだろうか?」「なぜ、こんな構造になっているのだろうか? 私だったらこうするが、そうしないのはなぜか」などと、疑問に感じたことについて自分で懸命に考えて調べてからいろいろな顧客の声を聞く。すると、「なるほど」と思えるところや、「ここをこう変えたらもっと良くなるはずだ」といった発想が生まれてくるものだ。

 「このままでいいだろう」と満足しきった状態では、差異化のヒントは得られない。現状に甘んじていない人の「なぜ?」という疑問が、ヒット商品の誕生につながるのではないか。そのため、私は開発陣に「子供のような好奇心を絶えず持って、『なぜ?』と思うことを癖にしてみたらどうか」と言い続けている。

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