この17年で売り上げを4倍超に伸ばし、その8割を海外で稼ぐダイキン工業。なぜ、世界で売れる製品を開発できるのか。その秘密を探ると3つの仕掛けが見えてくる。[1]差異化商品の追求、[2]コア技術の磨き上げ、[3]モジュラーデザイン、だ。その具体的な取り組みに迫る。まずは[1]の差異化商品の開発と[2]のコア技術の磨き上げを取り上げる。

 世界で売れる製品を開発するための3つの仕掛けがある──。世界中で販売台数を増やし、売上高を伸ばしているダイキン工業。なぜ、世界で売れる製品を同社は開発し続けられるのか。多くの技術者が関心を示すであろう、この問いの回答が3つの仕掛けだ。[1]差異化商品の追求、[2]コア技術の磨き上げ、[3]モジュラーデザイン、である。

研究開発と設計・生産、営業・販売の「三位一体」の開発

 「1歩でも半歩でも他社の先を行かなければ競争に勝てない」。ダイキン工業取締役副社長執行役員でグローバル戦略本部・生産技術担当の冨田次郎氏はこう語る。ほぼ空調専業メーカーである同社は、空調事業が傾けば会社が存亡の危機に陥る。複数の事業を持つ総合家電メーカーであれば、空調事業がダメでも他の事業でカバーする方法がある。だが、ダイキン工業にはそれができない。2010年に世界一の空調メーカーに上りつめて以降、その座を維持する同社にとって、空調事業は大黒柱だが、1つ間違えば“アキレスけん”にもなり得るのだ。

 そのため、競合他社の製品とは機能や性能、使い勝手などが異なる「『差異化商品』を開発しなければ、ダイキンは生き残れないという思いを全社員が共有している」(同氏)という。こうした背景が[1]の差異化商品の追求にはある。

 この危機感の下、ダイキン工業は開発において差異化商品を徹底的に追求する仕掛けを導入している。「IV層管理」と呼ぶものだ(図1)。IV層管理は、文字通り開発を4段階に分けて管理する。進め方は、数字の大きい層から小さい層へ向かう。すなわち、(1)IV層調査企画⇒(2)III層開発⇒(3)II層開発⇒(4)I層開発の順に進めていく。

図1 「IV層管理」による開発
5年先を見据えて新しい商品を4段階に分けて開発していく。前半の2段階が研究・技術開発で、後半の2段階が商品開発に相当する。研究を担当する部署(TIC)と、設計・生産を担う空調生産本部、営業・販売を手掛ける空調営業本部が参画することで、売れる商品の開発を効率よく進める。
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 まず、(1)のIV層調査企画では、5年先を見てどのような商品を開発すべきかについてアイデアを検討し、そのために必要となる技術を考えて、かつ可能性を評価する。続いて(2)のIII層開発では、IV層調査企画で出てきた商品アイデアをある程度具体的にイメージしながら、必要な技術を開発していく。そして、その結果を基に本当に差異化商品を開発できるか否かの見極めをこの段階で行う。これらの2層は研究および技術開発の段階に相当する。

 以上の業務を主体的に担うのは、国内の全研究者が所属するテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)だ。だが、研究開発を担うTICだけではなく、製品の設計・生産を担当する空調生産本部も参加する。研究者の知見に加えて、製品や生産技術の知見を織り込むことで、商品開発の際の検討事項を事前に洗い出したり、顧客ニーズとのミスマッチをあらかじめ防いだりすることにつながるからだ。これにより、II層開発への移行がスムーズになる。なお、この融合をうまく進めるべく、多くの研究者はTICと生産本部を兼務しているという。

 こうして差異化商品を開発できると判断したら、いよいよ商品開発の段階へと進む。これが(3)のII層開発と(4)のI層開発だ。ここからはTICに代わって空調生産本部が主体的に業務を進めていく。

 (3)のII層開発では、次(次年度)の新商品の開発に着手する。特徴は、キックオフとなる設計審査(デザインレビュー)に、空調生産本部に加えて、営業・販売を担う空調営業本部が参加することだ。開発する商品に対し、仕様やコスト、発売時期などを確認して投資計画を立てるためである。もっと言えば、どの工場で造るのか、どれくらい利益を出せるのかまで見極めている。そして、最後に(4)のI層開発において、新商品の設計と生産準備について具体的な作業を開始する。こうして1年~1年半の期間で新商品を形にしていくのである。

 このIV層管理では5年先を見た商品の開発が基本だが、これは技術進化の速いソフトウエアの開発には向かない。そこで、ソフトウエアの開発ではIV層調査企画とIII層開発の2段階を素早く進め、半年から1年半のスピードで商品に仕上げる。例えば、米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の会話型人工知能(AI)「Alexa(アレクサ)」に対応したAIスピーカー「Amazon Echo(アマゾンエコー)」に適応した空調リモコンでは、Amazonの技術を活用するため、IV層調査企画とIII層開発を省いて開発を進めたという。

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