第4次産業革命時代のスマート製造業の条件と言われる「マスカスタマイゼーション」。個々の顧客が望む製品を大量生産並みのコストで造って提供する、革新的なものづくりだ。これにはIoT(Internet of Things)の導入が必須と考えられている。だが、果たしてそれだけでマスカスタマイゼーションができるのだろうか。他社に先駆けて「マスカスタマイズ生産」が可能な生産ラインを構築したダイキン工業の答えは「ノー」だ。同社のマスカスタマイズ生産の基礎には、「1個流し生産」の確立とトヨタ生産方式の導入がある。

 IoT(Internet of Things)を導入してペイするのか?──。経営者がIoTに関して抱く最大の疑問がこれと言っても過言ではない。確かに、IoTを導入すれば生産現場の改善は進む。だが、現場改善で得られるコスト削減だけではIoTに投じる高額の費用を回収するのは難しいという声がIoTコンサルタントやIoTユーザーから上がっている。

図1 マスカスタマイズ生産の条件
ダイキン工業の場合、1個流し生産が可能な生産現場にIoTを導入したからこそ、マスカスタマイズ生産が可能になった。IoTを導入するだけではマスカスタマイズ生産は難しいと同社はみている。
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 IoT化を加速するダイキン工業もそうした1社だ。同社は一段上の「マスカスタマイゼーション」への対応を狙い、まずはそれを生産面で可能にする「マスカスタマイズ生産」を実現した。個々の顧客のニーズに応じた製品を1品ずつ造れば、顧客満足度が高まる上に、価格を上げられるかもしれない。

 だが、「IoTを導入すればマスカスタマイズ生産はできる」と単純に捉えているとしたら、それは誤解と言えるだろう。少なくともダイキン工業にとって、IoTの導入はマスカスタマイズ生産を実現するための必要条件に過ぎない。結論から言えば、「1個流し生産」を実現する高度な生産現場を持っているからこそ、IoTが効果的に機能してマスカスタマイズ生産が可能になったのだ(図1)。1個流し生産とは、同じ生産ラインの中で異なる種類の製品を1つずつ造り分けていく生産のことである(図2)。複数の種類の製品を同じ生産ラインで造り分ける混流生産の究極の姿とも言える。

 1個流し生産は、まさに“言うは易く行うは難し”だ。その証拠に、エアコン業界では受注生産品を除き、量産モデルで1個流し生産を行っている企業はダイキン工業以外にまず聞かない。「1個流し生産のためには、そのための仕組みを構築して運用する必要がある。とても一朝一夕にはできない」とダイキン工業滋賀製作所空調生産本部滋賀製造部長の小倉博敏氏は語る。

図2 家庭用エアコンの工場である滋賀製作所(滋賀県草津市)
1台ずつ異なる種類の製品でも造れる1個流し生産を実現している。
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