この17年で売り上げを4倍超に伸ばしたダイキン工業。足元の業績も好調だ。“老舗”の大企業がここまでの成長を見せるのは珍しい。その分、知りたいことはたくさんある。売り上げの8割を海外で稼ぐグローバル企業なのに、なぜ日本に新工場を建てたのか。それにより造り方をどう変えるのか。何のためにIoT(Internet of Things)を導入し、そして何より、なぜ世界で売れる製品を開発できるのか──。ダイキン工業が進めるものづくりの革新に焦点を絞り、同社の経営の舵を取る代表取締役社長兼CEOの十河政則氏を直撃した。

国内で25年ぶりに、業務用エアコン(ビル用マルチエアコン)を造る新工場「堺製作所 臨海工場 新1号工場(以下、臨海新工場)」(堺市)を立ち上げました。人口がピークアウトして今後は縮小に向かう日本市場に新工場とは驚きました。今なぜ、日本に新工場を造ったのでしょうか。

十河氏:なにも驚かせるつもりはなく、ダイキン工業としては当然の帰結です。臨海新工場の建設には背景があります。

 まず、「市場最寄化(もよりか)」の観点。当社がグローバルで展開する市場最寄化戦略は、各地域の市場の近くで製品を生産することにより、生産から市場に供給するリードタイムを短縮し、在庫を抑えつつ、販売の機会損失が起こりにくいという利点があります。加えて、為替変動のリスクヘッジ、物流コストの低減など、ビジネス環境の変化に応じて柔軟に生産体制を変えられるといったメリットがあります。

 確かに、日本は成熟市場ですが、世界で見ると依然として大きな市場規模があります。2017年度に我々は日本市場で約4500億円を売り上げました。これを2020年度には4900億円にする計画です。つまり、年率3%の伸び代があると我々は見ているのです。日本市場で勝つために、当然、日本市場向けの製品は基本的に日本で生産します。最重要市場の1つであり、総合家電メーカーなどの強力なライバルが競う厳しい日本市場で勝たずに、今後、世界で勝つことはできないと考えています。

 もう1つの背景は、工場の老朽化とBCP(事業継続計画)対策の必要性です。臨海旧工場は1978年の、その近くにある金岡工場(堺製作所金岡工場、堺市)は1963年の設立です。もともと臨海工場は、空調機の心臓部である圧縮機を対象に、研究開発から生産までを担う一貫工場として立ち上げました。その後、店舗用空調機を造る金岡工場の生産能力を超えた分の室外機を臨海工場で造るようになりました。金岡工場周辺の状況も大きく変化しました。設立から50年以上が経つ間に、どんどん住宅地化が進んだのです。そのため、トラックで輸送しにくく物流面での制約が出てきました。

 こうした背景から、耐震性を含むBCPの視点も考慮し、国内工場を再編しなければならないと考えるようになりました。検討の結果、臨海工場を業務用エアコンに関する世界のマザー工場として位置付けることにしました。だからこそ、我々には新しい臨海工場が必要だったのです。

ダイキン工業 代表取締役社長 兼 CEO 十河 政則氏(写真:山本尚侍)
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