「Photoshop」「Illustrator」「InDesign」、そして「Acrobat」などを開発販売する米アドビ(Adobe)は、世界各国に事業拠点を設けるグローバル企業だ。福利厚生ではグローバルで共通する制度を設定し、事業拠点のある各国の事情(主に法制度や保険制度)に合わせて適用している。同社の福利厚生の考えと日本独自の制度について、日本法人であるアドビ システムズ 人事部 ビジネスパートナーの草野多佳子氏に聞いた。

安心して働ける環境を用意

 アドビでは、福利厚生において2つの大原則「社員が持てるパフォーマンスをフルに発揮できる環境を用意する」「社員が安心して働ける環境を用意する」を掲げている。「アドビ システムズが用意している福利厚生関連の各制度は、この大原則を実現するために設けている」(草野氏)。社員がパフォーマンスを発揮し、安心して働くためには社員の家族への支援も必要との考えのもと、社員の家族も対象にしている福利厚生制度も少なくない。

アドビ システムズ 人事部 ビジネスパートナーの草野多佳子氏
(撮影:菊池くらげ、以下同じ)
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 例えば、健康管理・維持の視点で設けている「ウェルネス補助プログラム」では、「豊かで健康的な生活を送るために必要と認められるもの」について、費用を年間6万1520円(2019年度)まで補助する。トレーニングジムや水泳などのスポーツ施設会員費をはじめ、スポーツに必要な道具とウエア、サプリメントの購入費用なども含まれる。子供のスイミングスクール利用料など、社員と生計を共にする家族にかかった費用も申請可能。「マッサージに行った、山登りのグッズを買った、といった費用も申請できる」(草野氏)。メンタルヘルスのケアなどを目的に、瞑想(めいそう)アプリ「Headspace」の利用アカウントも社員に提供している。

 給付金制度では、多くの企業で取り入れている退職金制度や持ち株制度、また、グローバル企業ならではの出張保険制度に加えて、アドビ システムズが掛け金を全額負担する障害保険や長期休業時の所得補償保険を用意する。社員(フルタイム勤務契約社員も含む)は費用負担なしで、死亡や高度障害、病気、けがなどで働けなくなった場合に保険金が支払われる。「充実した保険関連制度があることもアドビの定着率の高さに貢献している」(草野氏)。

 健康維持のための日本独自の制度として特徴的なのが、「PIT」と呼ぶ社内マッサージルームの存在だ。ヘルスキーパー2人が、マッサージやはり治療を施すプログラムを実施している。ヘルスキーパーは契約社員で、アドビが取り組んでいる「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)」の取り組みの一環として、障害者採用で人材を募集した。各国支社の独自プログラムの実施には米国本社の許可が必要だが、ダイバーシティ&インクルージョンはグローバルの方針だったため、米国本社も協力的だったという。

社内に設けたマッサージルーム「PIT」
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 社員は社内システムで予約をすれば、PITで施術を受けられる。会社の外にある専門の治療院に通うよりも手軽だし、マッサージが40分で1000円、はり治療が60分で2500円など安価だ。導入前は「どの程度の社員が利用するが想像できなかったが、あっという間に予約が取りにくくなるほどの人気になった」(草野氏)。約400人の全社員のうち、月に100人以上が利用しているという。