IT企業の先見性は、事業だけに現れているわけではない。快適なオフィスや社員食堂だけでなく、斬新な福利厚生を導入・運用している企業も多い。日本のIT企業各社のすごい福利厚生について、実際に利用した社員の感想も含めてお届けする。

 ChatWork(チャットワーク)は、情報共有や業務効率を改善するメッセージサービス「チャットワーク」の提供やセキュリティソフトの販売を手掛ける企業だ。同社は人事コンサルティングのリンクアンドモチベーションの企業診断で、2009年と2010年に社員満足度1位を獲得するなど「働きやすい企業」として高い評価を受けている。

 この“働きやすさ”を実現している「基盤」の1つが、ChatWorkが設けている“社員が発案する”福利厚生制度だ。なぜこのようなユニークな制度を立ち上げたのか。その理由をChatWorkコーポレートサポート本部の西尾知一本部長に、そして、実際に利用している社員の声を同人事総務広報部の山田葉月広報ディレクターにそれぞれ聞いた。

オフィスの入り口
(撮影:皆木 優子、以下同じ)
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 ChatWorkの創業は2000年。2004年11月に、現在のような株式会社として設立した。現在は東京、大阪、神戸、米国シリコンバレー、そして台北にオフィスを設け、社員は2018年5月時点で88人にまで増えた。

 男女比は7対3で、社員数が30人程度だった3~4年前と比べると女性の割合が急速に増えている(設立当時の男女比は9対1)。年齢層のボリュームゾーンは30~35歳代で、次いで25~30歳代、35~40歳代が続く。社員の半分程度が結婚しており、4割近くの社員が子育て中という。

福利厚生制度はスタッフの声から生まれた

 ChatWorkは創業時のトップ(2018年6月に退いた山本敏行氏)が「社員第一主義」を掲げており、福利厚生制度にもその考えを反映している。「社員を大事にすることで社員は定着して長く活躍してもらえますし、業績も上がっていきます」(西尾氏)。

ChatWork コーポレートサポート本部の西尾知一本部長
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 福利厚生制度が業績にどのような影響を与えているかを、評価するのは難しい。しかし西尾氏は、ChatWorkの目的である「働き方を変えよう」を自ら実現するために、福利厚生制度は自分たちの理念やビジョンを示す1つの指標になると語る。

 先にも説明したように、同社では福利厚生制度に社員の意見を反映させている。その経緯について西尾氏は、「福利厚生は社員が使うもの。社員が使いやすい制度を社員が提案していくのは自然な流れ」と説明する。もちろん、創業者社長の山本氏が立案した制度もあるが、これも社員の立場に立って「社員が使いやすい、社員が望んでいる」制度を用意したという。

 山本氏がこの考えに至ったのには創業当時「少ない人数で頑張っていたら、メンバーの多くが辞めてしまった」(西尾氏)ことが影響しているという。また、山本氏が、一度決めたらその方向に振り切るような性格だったことや、当時のChatWorkがスタートアップらしく、業績を厳しく突き詰めていくような方針を採っていなかったことも、ユニークな福利厚生制度を導入できた理由だと言う。

年3回10日間の休暇取得、出産立会い制度もあり

 ChatWorkのユニークな福利厚生制度の一つが、「年3回長期休暇取得推奨制度」。年に3回、10日間程度の長期休暇を取るように勧める制度だ。同社のような少数精鋭の組織だと、年に1回でも10日間の休みを取るのは難しい。しかし、主に年末年始、お盆、そして5月の大型連休の時期を中心に、多くの社員が長期休暇を取得しているという。