システム構築プロジェクトの成功率やシステム障害の発生頻度――。ITシステムを巡る実態を独自に調査したのが2014年。本記事は、日経コンピュータ2014年10月16日号の特集「情報システムのリアル」の内容を抜粋したもの。当時と比べて、システムの現場は改善しているのかどうかなどを検証してみていただきたい。

※社名や製品・サービス名、人物の肩書、コメントなどは2014年執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

プロジェクト成功率は75%

「あなたが関わっている・知っている新規システムの導入・開発プロジェクトの成功率は何割ですか」に対する回答
プロジェクト期間が長いほどリスクが上昇
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 ユーザー企業のシステム部門やITベンダーで働く誰もが避けたいこと。その代表が、システム構築プロジェクトの失敗である。多くのシステム構築の現場では、プロジェクトマネジメントに細心の注意が払われていることだろう。

 だが、その成果はいかに。現在、システム構築プロジェクトの成功率は一体どれくらいなのだろうか。

 この素朴な疑問を解消するため、ユーザー企業のシステム部門とITベンダーに勤務する回答者を対象に、「あなたが関わっている・知っている新規システムの導入・開発プロジェクトの成功率は何割か」を聞いた。プロジェクト成功の定義は、「当初予定していた品質・予算・納期(QCD)を順守できた」である。今回は、プロジェクトの難易度は開発期間によって変動すると考え、開発期間ごとに成功率を尋ねた。

 その結果、それぞれのプロジェクト成功率は以下のようになった。「3カ月未満」が81%、「3~6カ月未満」が78%、「6カ月~1年未満」が74%、「1年以上」が67%だ。各規模の回答はほぼ同数だったので、これらを単純平均すると、新規システムの導入・開発プロジェクトの成功率は75%となる。プロジェクト10件中、成功するのは7~8件、失敗するのは2~3件ということだ。

 3カ月未満の案件と、1年以上の案件の成功率の差は14ポイント。プロジェクト期間が長くなるほど、成功率は低下する傾向があることが分かる。

 本調査では、「3カ月未満」「3~6カ月未満」「6カ月~1年未満」「1年以上」のプロジェクトのそれぞれについて、「0割」から「10割」まで1割刻みで成功率を一つだけ選択してもらった。4タイプのプロジェクトについて、成功率を集計し、その分布状況を右下のグラフに示した。

 まずは「成功率8割以上」、つまり「ほとんど成功する」と答えた回答者の比率に注目してほしい。プロジェクト期間が「3カ月未満」の場合は70%と圧倒的に多い。成功率8割以上の比率は、「3~6カ月未満」が63%、「6カ月~1年未満」が53%。「1年以上」は唯一、5割を切り42%だ。「1年以上」と「3カ月未満」では28ポイントと大きな開きがある。

 「成功率3割以下」、つまり「ほとんど失敗する」と答えた比率も見てみよう。ここで最も比率の高かったのは「1年以上のプロジェクト」で20%だった。成功率3割以下については、「3カ月未満」が10%、「3~6カ月未満」が11%、「6カ月~1年未満」は13%。「1年以上」の値は、「3カ月未満」の2倍である。これらの結果から、プロジェクト成功率を大きく左右する分岐点は「1年」と言えそうだ。

「失敗の最大の要因は対話不足」

 プロジェクト成功率に関する一連の結果は、立場によって異なるのかどうかも気になる。ユーザー企業とITベンダーそれぞれについて分析したところ、傾向や数値はほぼ同じだった。「プロジェクトの成功率は75%」というのがIT業界の共通認識といえそうだ。

 75%-。この成功率を高いと見るか低いと見るかは難しいところだが、まずまずの数字。これは、偶然によるものではないだろう。ユーザー企業のシステム部門やITベンダーの担当者が、プロジェクトマネジメントの知識体系である「PMBOK」の導入を進めたり、プロジェクトマネジメントの支援組織「プロジェクト・マネジメント・オフィス(PMO)」を設置したりして、リスクを抑える努力を続けてきた成果と見ることもできる。

 だが、油断は禁物だ。「プロジェクト管理の必要性や有効性を理解していない社員が多い」(中堅ITベンダーの主任)という指摘や、「いまだに開発プロセスの標準化が進んでいない」(大手ITベンダーの課長)といった意見もある。「社内外を問わず、コミュニケーション不足による認識の齟齬が多く、これがプロジェクト成功の最大の阻害要因になっている」(システム子会社の主任)。現場の対話力不足を指摘する声は多い。