マイクロソフトはWindowsの会社という印象をお持ちの方は多いと思う。しかし現在は、「Microsoft Azure」を軸とするクラウド事業がビジネスの中心になっている。Microsoft Azureをグローバルで提供するにあたり、全世界に54カ所のデータセンターリージョンを展開しており、AI関連人材の数も約8000人に上る。

もはや待ったなしのデジタル変革 一刻も早い取り組みが急務に

 時代の変化に伴って、事業に対する考え方も大きく変わった。創業時に掲げた「すべてのデスクとすべての家庭に1台のコンピュータを」というミッションも、現在では「地球上のすべての個人と組織がより多くのことを達成できるようにする」に変わっている。日本法人である当社としても、革新的で安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジーを通して、日本の社会変革に貢献することを目指している。

 その背景にあるのが、デジタル技術による急速な社会変革だ。今後はスマートフォンやPCなどのデバイスはもとより、自動車、家庭、オフィス、工場など、あらゆるモノがネットワークを介してつながるようになる。このようにインテリジェントなクラウドとエッジが有機的に連携することで、これまでにないサービスやビジネスモデルが次々と生み出されるはずだ。

 こうした時代においては、当社のようなIT企業だけでなくすべての企業がデジタルカンパニーとして発想し、ビジネスを進めていく必要がある。実際に、米国などにおいても、デジタル時代への変化を読み切れなかった伝統的な大企業が、苦戦を強いられるような状況をしばしば目にする。今こそ、皆様ご自身にも、デジタルカンパニーとしての自社の将来を考えていただきたい。

 大きな変化を迫られるということは、チャンスもまた広がっているということだ。デジタル時代への対応は、ITの課題ではなく経営課題そのもの。経営者がこの世界観をどう理解しているかで、今後の競争力も大きく左右されることになる。特にインテリジェントテクノロジーには、素早くスモールスタートして、失敗したとしてもそこから学ぶことができるという大きな利点がある。これまでのように多額のコストや時間、人手を費やさなくとも、どんどん新たなチャレンジに取り組めるのだ。

数多くの先進日本企業がIoT/AIやMR技術の活用を推進

 既に日本においても、IoTやAI、MR(Mixed Reality)などのテクノロジーを積極的に生かそうとする先進企業が現れている。

 例えば、フォークリフトのリーディング・カンパニーである豊田自動織機様では、IoTを用いた予兆保全や人員配置の最適化に取り組んでいる。こうしたビジネスにおいては、世界中で使われているフォークリフトの稼働率をいかに向上させるか、また顧客満足度をどう高めるかが重要なポイントとなる。そこで同社では、フォークリフトの車両情報を一元管理し、予兆保全を行うことで故障などの発生を防止。また、一番人手が必要な場所に適切に人を配置できるようにすることで、物流倉庫業務の最適化を図っている。

 また、ノーベル賞受賞にも貢献したことで知られる浜松ホトニクス様では、これからの少子高齢化社会を見据えて、クラウド/AIを活用した早期認知症診断支援システムを開発する取り組みを進めている。医用画像の診断は専門の読影医によって行われるが、人手による対応にはどうしても限界がある。そこでこのプロジェクトでは、数万件の画像データをAIが学習。認知症が起きる前にその可能性をつかむことで、早期治療の実現に役立てようとしている。

 加えて、船舶用動力/計装システムメーカーのJRCS様では、遠隔トレーニング/メンテナンスなどのソリューションに、ホログラフィックコンピュータとヘッドマウントディスプレイを組み合わせた「Microsoft HoloLens」を採用。これまで同社では製品に関するトレーニングなどを下関市の本社で行っていたが、MR技術の活用によって、世界中どこからでも参加できる環境を実現した。

自社実践の成果を製品に反映 今後に向けた投資も意欲的に実施

 日本マイクロソフトでも、「Office 365」のカスタマーサポートにAIを活用中だ。ここでは、機械学習技術による問い合わせ文章の解析や、チャットボットによる解決策の提案などを実施。また、通話録音の内容から、AIがお客様の感情を分析するといったことも行っている。デジタルトランスフォーメーションを進めていく上では、よりよいカスタマーエクスペリエンスをいかに提供できるかがカギとなる。当社でも、こうした取り組みで得たノウハウを製品の改善に生かしていく考えだ。

 また、これと同時に、我々のテクノロジーを世界中のお客様に利用していただくための投資にも力を入れている。現在では約200万キロメートルにも及ぶ光海底ケーブル網を張り巡らせており、全世界100カ所以上のデータセンターでは数百万台のサーバーが稼働中だ。サスティナビリティへの対応も進めており、2020年には自然エネルギーの利用率を約60%へ、さらに将来的には100%へと引き上げる予定だ。

 加えて、人間の創造性を拡張するAIの強化にも積極的に取り組んでいく。当社のAI技術は、画像/音声認識や文章読解、リアルタイム翻訳など、様々な領域で人間と同等以上の精度を達成している。これからの時代には、仕事や生活のあらゆる場面でAIの活用が加速していくはず。倫理的な問題にも目配りしつつ、人の能力を補完するツールとして進化させていきたい。

出典:日経コンピュータ 特別レポート版
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