資本主義の根底を揺るがすモンスター級の破壊力を持つ――。野村総合研究所の此本臣吾社長は、ブロックチェーンの潜在能力をこう評価する。一方で解決すべき課題は山ほどあり、インターネットの歴史で例えるなら1970年代後半の段階だと指摘。此本氏が見据えるデジタル産業革命の未来とは。

(聞き手は戸川 尚樹=日経 xTECH IT 編集長、
編集は増田 圭祐、浅川 直輝=日経 xTECH/日経コンピュータ)

ブロックチェーン技術は非常に魅力的ですが、課題は多いようです。

 中央で世の中を支配するプラットフォーマーを無くす。これがブロックチェーン技術の本質ですが、スケーラビリティ(拡張性)の課題に加え、有望なユースケース(事例)が見つかっていない問題を抱えているということをお話しました。そのため、少数のプラットフォーマーが市場を支配する「勝者総取り」の構図は、今も変わっていないわけです。

野村総合研究所の此本臣吾社長
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 だからといって現状のままがいいということにはなりません。我々の社会にとって重要なのは、少数のプラットフォーマーが支配する現状を打破して「Decentralized(分権化)」することだと考えます。その手段として、ブロックチェーンは有効ということであって、使うこと自体が目的ではありません。

 2018年7月にサンフランシスコで「Decentralized Web Summit」というカンファレンスがありました。インターネットが当初目指していたゴールであるDecentralizedのコンセプトに立ち返って議論しましょうと。仮想通貨として時価総額2位の「イーサリアム(Ethereum)」の関係者や、Webコンテンツのアーカイブを管理する「The Internet Archive」といった組織をはじめ、世界のIT企業や世界の研究機関からそうそうたるメンバーが集まりました。

 世の流れは少しずつ「Decentralize」に向かっていると感じます。EUが一般データ保護規則(GDPR)を施行したのは、少数のプラットフォーマーへの法規制を強める意図があります。巨大なプラットフォーマーが興隆する陰で、知らぬ間にいろいろな問題が噴出している可能性があるのです。

巨大プラットフォーマーの陰に隠れる真実

 「ストリートライト・エフェクト(街灯効果)」をご存知ですか?例えば夜に公園で財布を落とした人は、街灯の明かりが届く範囲ばかりを探して、見つからなければ「財布は無い」と思ってしまいがちです。本当は明かりの届かない暗がりに落ちていたとしても気が付かないわけです。

 人間は知らずのうちに見えている部分だけを真実と思いがちですが、実は見えない部分にこそ問題の本質があります。こうした現象がインターネット上のいろいろなところで起こっているように思います。

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