資本主義の根底を揺るがすモンスター級の破壊力を持つ――。野村総合研究所の此本臣吾社長は、ブロックチェーンの潜在能力をこう評価する。一方で解決すべき課題は山ほどあり、インターネットの歴史で例えるなら1970年代後半の段階だと指摘。此本氏が見据えるデジタル産業革命の未来とは。

(聞き手は戸川 尚樹=日経 xTECH IT 編集長、
編集は増田 圭祐、浅川 直輝=日経 xTECH/日経コンピュータ)

ブロックチェーン技術をどのようにとらえていますか。

 中核となるプラットフォーマーが存在しないプラットフォームを実現する技術。それがブロックチェーンの真髄だと思います。

野村総合研究所の此本臣吾社長
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 「たいていの技術は末端の仕事を自動化しようとするが、ブロックチェーンは中央の仕事を自動化する」。仮想通貨としてビットコイン(Bitcoin)に次ぐ時価総額を持つイーサリアム(Ethereum)の考案者、ヴィタリック・ブテリン氏の言葉です。ブロックチェーンが実現する世界については、「タクシー運転手の仕事を奪うのではなく、ウーバーを無くして運転手が直接仕事を取れるようにする」というブテリン氏の例えが分かりやすいでしょう。

 ブロックチェーンの本質は、世の中の至る所にある取引仲介機能をディスラプト(破壊)して、取引コストを限りなくゼロにすることにある。つまり取引コストが存在するところには、すべてブロックチェーンを適用できる可能性があるのです。

大企業という概念が無い世界

 「取引仲介機能をディスラプトする」とはどのような意味か。少々SFじみた話になりますが、順を追って説明しましょう。まず、ブロックチェーンの有力な用途の1つにスマートコントラクトがあります。仲介業者を通さずに契約から決済までを自動化する仕組みです。

 企業がスマートコントラクトを活用すれば、金融機関を介さずに取引が可能になる。ブロックチェーンでつながった企業同士がネットワークを介して垣根無くつながる「オープンネットワーク型企業(ONE)」と呼ばれる世界です。

 一方、ブロックチェーン上に情報を集約し、複数の分散型アプリケーションが自動的にデータを処理する世界もあります。「自律エージェント」と呼ばれる世界です。例えば、各家庭が太陽光などを利用して発電した電力を、ブロックチェーン上に集約したスマートメーターのデータを基に自動的に最適配分(売買)するような仕組みです。

 ONEと自律エージェントの2つを合わせたのが、「DAE(Distributed Autonomous Enterprises、分散自律企業)」の世界です。あくまで理想像ではありますが、それぞれの組織がモジュール化して自動的に連動するため、集中管理やヒエラルキーといった概念は存在しなくなります。

 これまでは企業が開発、生産、販売、アフターサービスなどを1つのバリューチェーンとして構成し、それが企業の存在価値にもなっていました。しかしDAEの世界は「開発だけ」の組織や「生産だけ」の組織が自動的につながるようになります。1つの企業がこうした複数の専業組織を持つ意味がなくなり、大企業という概念も無くなってしまう。

 タクシーの運転手はウーバーに仲介手数料を払うのではなく、自分たちのデータをDAEと連動させて乗客から料金を直接かつ自動的に徴収します。ブロックチェーンがもたらす取引仲介機能の無い世界とは、究極的にはこうしたものです。

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