日本において、地震は避けられない災害だ。今の科学技術では、いつどこでどんな規模の地震が発生するかを正確に予測できない。地震の原因となる断層やプレートの動きの前兆を捉えようとしても、それぞれが動く周期は数百~数千年と長期であることが多く、経験則が通用しにくいからだ。

地震と津波の発生
プレートが動いて地震が発生した場合、海水が押し上げられて津波になる(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

 突然の地震でも迅速な救援や復旧を実施するには、発生直後の判断が重要になる。一方で、地震と津波の被害は広域にわたる。災害の直後に正確な被害情報を集めることは難しく、東日本大震災では救援が必要な市町村や負傷者を搬送可能な病院の把握にも、数日を要した。

 東日本大震災での教訓を生かし、いち早く災害対応の体制を構築できるように、東北大学災害科学国際研究所の越村俊一教授が中心となって研究開発した、世界初のシステムがある。地震発生から15~30分で地域ごとの津波被害を予測する、「リアルタイム津波浸水・被害推定システム」だ。

 同システムは、動いた断層を推定してスーパーコンピューター(スパコン)で津波を解析し、被害のシミュレーション結果を自動で配信する。研究成果を実用化するために、国際航業や東北大学ベンチャーパートナーズ、エイツー(東京・品川)、NECは2018年3月、RTi-cast(仙台市)を共同で設立。自治体や企業、病院でシステムを使ってもらい、救援活動やがれきの撤去などに役立てる方針だ。

 内閣府はすでに、南海トラフ地震に備えて同システムを採用している。静岡県から鹿児島県まで約6000kmの距離を対象に、18年4月から本格的な運用が始まった。地震発生から30分以内に被害予測の情報を得たいという要望に合わせて、30m四方の解像度での予測結果を報告する。

津波のシミュレーションのイメージ
津波が到達して浸水していく様子をシミュレーションで可視化する(資料:RTi-cast)
[画像のクリックで拡大表示]

 「大学での研究成果を社会に広めるには、高い技術や同じ志を持つ企業の力が必要だ」と、村嶋陽一社長は会社設立の背景を話す。スーパーコンピューターを使わずに解析すると、地震の発生から6時間後の津波による浸水被害を計算するのに2~3日かかっていた。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら