猛暑、地震、集中豪雨――。2018年は自然災害が相次ぐ年となった。今後も気候変動などの影響を受け、激甚化すると言われており、どう備えるかが喫緊の課題だ。ただし、必要以上に恐れることはない。自然災害は計算による再現が難しいとされていたのは一昔前のこと。スーパーコンピューターの技術が発達し、過去の現象や未来に起こり得る現象も計算できるようになった。行政や企業では自然災害をシミュレーションして、防災や減災に役立てている。気候変動対策の次の一手としても期待が高まる。

 2018年の夏は災害級の「熱さ」だった。総務省によると、同年4月30日から8月5日までに熱中症で搬送された患者は全国で7万1266人。08年の調査開始以来の最高値を記録した。都道府県別の搬送人数は、東京都が5994人と最も多い。

 東京をはじめとする都市部で特に熱中症の多い原因の1つが、「ヒートアイランド現象」だ。アスファルトやコンクリートなどがため込んだ熱を放射するほか、気温の上昇を抑える役割を担う緑地が少ないために、郊外よりも暑くなりやすい。埼玉県熊谷市では18年7月23日に41.1℃に達し、日本最高気温を更新した。

 そんな暑さに悩む埼玉県が18年8月、熊谷市の熊谷スポーツ文化公園で先進的なヒートアイランド対策の工事を完了した。海洋研究開発機構(JAMSTEC)のスーパーコンピューター(スパコン)を使って、遮熱舗装や植栽の効果をシミュレーションで事前に検証し、結果に基づいて最適な対策工事を選んで施工した初めての事例だ。温度の上昇を効率的に抑えられるほか、工事の費用削減につながる。

熊谷スポーツ文化公園でのヒートアイランド対策の概要。駐車場やバスの停留所と県営熊谷ラグビー場を結ぶ動線に、遮熱舗装や並木道を整備する(資料:埼玉県)
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 同公園には県営熊谷ラグビー場があり、19年9~10月にラグビーワールドカップ(W杯)を開催する予定だ。ただし公園内には日陰が少なく、バスの停留所や駐車場からラグビー場までの距離は約1km。直射日光を浴びながら10分程度歩くことになる。県は暑さ対策として、延長390mにわたって並木道や遮熱舗装を整備し、4600m2に高木を植栽する「小森のオアシス」の開設を計画した。

植栽前の熊谷スポーツ文化公園。右に見えるのは彩の国くまがやドーム(写真:埼玉県)
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植栽後の熊谷スポーツ文化公園。駐車場からラグビー場へ向かう道に高さ10mのケヤキを63本植えた。シミュレーション結果に基づいた施工は18年8月に完了した(写真:埼玉県)
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 「植栽には1本100万円程度の費用がかかることもある。JAMSTECと共同でシミュレーションを実施し、対策の効果が最大になるように木を配置できた」と、埼玉県環境科学国際センター研究推進室の嶋田知英副室長は話す。ヒートアイランド対策は一般に、効果の計算が複雑なため、経験則に基づいて計画する。具体的な温度や湿度の変化は工事後に計測して確認していた。

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