地震や豪雨による想定外の災害が続く近年、住民の避難を促すための方策がより重要性を増している。避難指示が発令されても、被害を軽視したり、自分だけは大丈夫と思い込んだりして、避難が遅れるケースが後を絶たない。

 今後も大規模災害の増加が見込まれるなか、VR(仮想現実)を活用して逃げ遅れる人を減らそうと試みているのが、建設コンサルタント会社の日本工営だ。津波や土砂氾濫による被害を数値解析などでシミュレーションした結果を、VR映像で可視化する。

 シミュレーションによる災害の被害想定は一般的に、紙やパソコンなどの画面上に表示して提供する。例えばインターネット上では、川が氾濫した際に周辺が浸水する様子をシミュレーションした動画や、被害の程度を地図上に色分けして示したハザードマップなどを閲覧する。こういった動画や画像では、災害の現実感や危機感が住民に伝わりきらず、避難につながらないことやシミュレーションの結果にとらわれて想定外の被害に対応できないことがあった。

浸水のハザードマップの例。降雨の規模ごとに浸水の深さを地図上に色分けして表示している。これを見れば自分が住んでいる地域の危険度が分かる(資料:国土交通省)
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 「災害は実際に起こらないと分からない、という概念が変わる。VRはこれ以上ない災害の疑似体験ツールだ」と、日本工営技術本部先端研究開発センターの野島和也主任は話す。

左は日本工営技術本部先端研究開発センターの野島和也主任、右は櫻庭雅明センター長(写真:日経コンストラクション)
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 VR空間で体験した出来事は、まるで現実であるかのように感じることができる。このことを利用して、多くの住民が抱く「自分は被災しない」という楽観的な考えを、「自分にも被害が起こり得る」という考えに変えていく。

 同社は、地域の地形や構造物の条件に合わせて土砂氾濫や津波が発生した際のシミュレーションを実施。その結果をVRで映像化して、自治体や河川管理者に提供する方針だ。自治体などが、住民向けの防災教育で使うことを想定する。

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