様々なビジネスチャンスをもたらすSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)。意識の高い建設会社は既に中期経営計画などに盛り込んで、KPI(重要業績評価指標)を設定している。技術面から目標達成を目指す動きが盛んになっており、各社は開発に余念がない。最新の「SDGsテック」の動向を追った。

 使用した後に、産業廃棄物として処分せずに有価で引き取ってもらい、ほぼ100%でリサイクルする――。こんな夢の材料が、建設現場の仮設材に使われ始めた。正体は、古紙やパルプのリサイクル材である紙素材だ。

梱包用の特殊強化段ボールを組み合わせて、トンネルに仮設壁を設置した。トンネル貫通時に流れる急激な風に伴って生じるコンクリートのひび割れを防ぐ(写真:清水建設)
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 2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、30年までに持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲットを盛り込んでいる。紙のリサイクルは、中でも12の「つくる責任、つかう責任」と15の「陸の豊かさも守ろう」に直結する項目だ。

 清水建設と王子ホールディングスは、紙素材の仮設利用技術を「KAMIWAZA」として共同で開発を進めている。既に2つの技術を実装した。

 1つ目がトンネルの風門への段ボール利用だ。施工時のトンネルは貫通すると、急激な風の流れが生まれ、覆工コンクリートの表面が乾燥して、ひび割れが発生する。それを防ぐために、トンネルの断面を塞ぐように風門という風圧に耐えられる仮設材を設置する。これまでは一般に、高価なナイロン製のバルーン材を使い捨てしていた。

 新たに使うのは、王子インターパック製の特殊強化段ボール「ハイプルエース」だ。ハイプルエースは、重量物の包装資材として利用されている3層構造の段ボール材で、衝撃吸収性と強度に優れる。内部に空気層の空洞があり、保温性能と遮音性能も併せ持つ。

3層構造のハイプルエース。厚さは15mm(写真:清水建設)
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ハイプルエースはマグロの輸送用の梱包箱に使われている(写真:清水建設)
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 清水建設は、長崎県が発注した「一般県道諫早外環状線(4号トンネル)」の約100m2の断面に、足場を背もたれにしてハイプルエースを設置した。作業に要した時間は、6人の作業員で半日程度だ。設計図に基づいて、断面形状に沿った1m四方のパーツに工場で裁断、加工する。現場では、高所作業車を使って人力で足場に固定するだけでよい。施工にクレーン車などは不要だ。

耐久性を上げるためにパーツの端は、工場で折り曲げている。段ボールなので、現場でも切ったり曲げたりしやすく微調整が可能だ(写真:清水建設)
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 「施工コストは従来の半分程度に抑えられる」。清水建設土木技術本部開発機械部技術開発グループの宇野昌利主査は、こう話す。作業員の高齢化や女性の増加が著しい建設業界において、建材が軽いということは大きなメリットになる。作業員の生産性向上に大きく寄与する。

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