都市に緑を増やそう――。緑の量の拡充をスローガンに、都市部では芝や色とりどりの花で構成する広々とした緑地を見かける機会が多くなった。一方近年では、生物多様性向上への意識の高まりに伴い、緑地のトレンドは「質の追求」へとシフトしている。より自然な緑地を目指して、その地域本来の生態系に配慮した在来種による植栽を希望する施主が増えているのだ。

緑地を巡るトレンドの変化(資料:大成建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 そんな施主のニーズをくんで、大成建設と苗木生産会社であるグリーンエルム(大分県日出町)が共同で開発したのが「群集マット」だ。地域環境に適合した複数の多様な草を創出できる。

 「群集マットの『群集』とは、植物社会学で使われる言葉で、要は植物の中の“家族”のようなものだ」。大成建設環境本部生物多様性技術室の渡邊篤室長はこう説明する。高木、亜高木、低木、草本のそれぞれの層を構成する種がまとまりとなったものが群集だ。気候や立地などの条件によって、地域環境に適合する種の構成は大体決まっている。

 例えば、関東地方などで多い「ヤブコウジ―スダジイ群集」。高木層として背が高い常緑樹のスダジイが育つ場所では、年間を通して地面付近に光が入りづらいため、落葉の植物は育ちにくい。この群集の草本層では、常緑のヤブコウジなどが育つのに適した種となる。

ヤブコウジ―スダジイ群集の構成例(資料:大成建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 群集に配慮した緑地は、人工でも安定性と持続性に優れている。ただし、人工的に実現させる上で課題があった。それは、群集を構成する「草」の育成だ。容器で栽培したポット苗を植える方法があるものの、初期は密生せず裸地ができてしまう。そこに外来種が入り込んで、除草などによる管理の手間がかかっていた。

 複数の植物の苗を育ててマット状にした「マット植物」を使う方法もある。ただし、地域本来の生態系にそぐわない種の組み合わせや、里山の土から発芽させた植物がほとんどで、初期景観を維持できなかったり、美しさに欠けたりした。

ポット苗を植えた様子。裸地ができている(写真:大成建設)
[画像のクリックで拡大表示]

既存の「マット植物」の課題(資料:大成建設)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら