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鮫島正洋
内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士

 「経営デザインシート」について、第28回のコラムで取り上げた。簡単におさらいすると、経営デザインシートとは、ビジネスモデルを将来のトレンドや環境変化に合わせて転換するときのブレンストーミングの際に利用する白地図のようなシートである*1

 このビジネスモデルのことを経営デザインシートでは「価値創造モデル」と呼んでおり、[1]利用できる資源(インプット)→[2]具体的なビジネスモデル→[3]提供する価値(アウトプット)という3つから構成する。

*1 経営デザインシートは以下の4つの部分から構成されている。
A)経営理念など、当該事業や会社にとって普遍性を有する根本となる概念
B)現在の価値創造モデル
C)将来あるべき価値創造モデル
D)B→Cに価値創造モデルを遷移すべき環境変化などのモチベーション

 経営デザインシートはもともと内閣府の「知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」で発案されたものであるが、今年度から、内閣府などの官庁と民間とで共同してこれを普及する活動に取り組み始めた。筆者はこれまで多くの政府委員会に関与してきたが、委員会が終了すると(つまり、政府から予算が途絶えると)、政府委員会で生み出された多くの有用な成果が埋もれてしまうという課題を痛切に感じていた。今回のプロジェクトはこの課題に対するチャレンジでもあり、成功すれば、1つのロールモデル(模範)となり得るものである。

 このチャレンジのために、知的財産関係の民間団体である一般社団法人日本知財学会の傘下にある分科会の枠組みを利用するというアプローチを採用し、2019年8月には、内閣府側を含む4人を発起人として「経営デザイン分科会」を発足した*2。筆者もこの分科会の発起人として名を連ね、弊所にて当分科会のキックオフを2019年10月9日に執り行った。

*2 日本知財学会の経営デザイン分科会のWebページのURL:https://www.ipaj.org/bunkakai/keiei_design/index.html

 この会合自体、開催2週間前に大枠が決まるという突貫工事で仕上げられたものであったが、50人を超える人が集まり、官民の枠を超えて経営デザインシートの活用・普及に向けた想いを語ることができた。

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経営デザイン分科会のキックオフ
2019年10月9日に弁護士法人内田・鮫島法律事務所で開催された。(写真:同事務所)

「1000社に普及」の声も

 以下、参加者からの貴重なアドバイスを紹介する。

「経営デザインシートは事業承継において、社長と承継者とが対話する際に大変有用なコミュニケーションツールである」(中小企業診断士)。
「経営デザインシートの描き方の研修を大企業の人事部から受注した。従業員のビジネスセンスを向上したいという趣旨のようである」(公認会計士)。
「経営デザインシートは、コンサルティングの際に、顧客との意識合わせを円滑に実現するために必須のツールである」(経営コンサルタント)。
「経営デザインシートを描くだけではなく、描かれた経営デザインシートの内容をどのように実現するか、という活動を今後していくべきである」(中小企業診断士、金融機関)。
「経営デザインシートを1000社に対して普及・啓蒙済みである。おおむね、評価は悪くない」(青年会議所)。

 経営デザイン分科会では今後、こうした声を拾い上げ、より多くの皆さんと共に、経営デザインシートに関する事例研究やシート自体の改良などに向けた取り組みを実施していく予定である。また、経営デザインシートというテーマを通じて、多くの分野の人材を集めて、ネットワーキングを図っていく*3

*3 経営デザイン分科会の直近のイベント「経営をデザインする~知財部門における経営デザインシートの活用~」は日本知財学会の学術発表会で行われる。URL:http://www.ipaj.org/workshop/2019/workshop_2019.html