鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
[画像のクリックで拡大表示]

 「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」を公正取引委員会が公表した*1。難しいタイトルの報告書なので何を主題とした調査かが分かりにくいが、一言で言うと、大企業と中小・ベンチャー企業がオープンイノベーションを行うに当たり、大企業がその立場を利用して、中小企業などに対して行うさまざまな高圧的かつ不当な要求事例について調査した報告書である*2

*1 「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」のPDF資料

*2 ただし、この報告書は「大企業VS中小企業など」ではなく、「製造業者VSその相手方」という体裁をとっており、大企業が相手方から受けた不当な要求事例も混在しているものと思われる。

 この報告書の中身を見てみよう。①秘密情報開示に関する事例、②知的財産権の帰属・ライセンスに関する事例など、いわばジャンル別に大企業による不当な要求事例が掲載されている。

 例えば、①秘密情報開示に関する事例に関しては、次のようなものが掲載されている。

「何度求めても絶対に秘密保持契約等を締結してもらえず、秘密保持契約等が無い状態での取引を強いられる」
「不具合が生じているわけでもないのに、取引先に対してノウハウの塊である制御アプリケーションのソースコードを無償で開示させられる」

 一方、②知的財産権の帰属に関する事例に関しては、以下のような事例が掲載されている。

「新しい発明を出願する場合には、取引先が一切関与していない場合でも、必ず共同出願にしなければならないという取引条件を一方的に受け入れさせられる」
「取引の過程において自社単独で生み出した知的財産権を、全て取引先に無償でライセンスするという取引条件を受け入れさせられる」

 もとより、我が国の民法には契約締結の自由という原則が敷かれており、自身に不利な契約書が提示された場合、その契約を締結しなければならないという義務はない。しかし、現実としては、上例のような不当な要求が重要な継続顧客からなされた場合、自社にとって不利であると認識していたとしても、取引関係の維持のために契約を締結するという選択をせざるを得ない場合が多い。

 このように、重要な継続顧客であるが故に、相手方に対して「優越的な地位」にある者が、その地位に乗じて不当な要求をすることは、独占禁止法に違反する「優越的地位の濫用」であるとされ、公正取引委員会が問題視する。