鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
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 スタートアップ企業(以下、スタートアップ)の法律支援を弁護士が行うべき機運が訪れている。2018年度、関東経済産業局では、オープンイノベーションの場面でスタートアップが直面する大企業との交渉において、ビジネスアドバイスができる弁護士を養成する初めての試みが施行された。ビジネスに口を出してはならない、というのが20世紀の弁護士業界の不文律だった。だが、21世紀の今求められているのは、法律的な見地からビジネスに口を出すことができる弁護士なのである。

 そもそもなぜそういうことが求められるようになったのかというと、オープンイノベーションの隆盛とその変容である。経済産業省が8年ほど前から提唱し始めたオープンイノベーションの概念は、自前主義脱却を旨とするもので、主として大企業の事業推進の方法に向けられていた。つまり、昨今のマーケットの速い動きに対応するためには、自前で全ての技術を調達することは不可能であるという前提の下、他社の技術を積極的に取り入れるべき、というのである。

 しかし、3年ほど前から、技術の流れる方向性がこの概念に加わった。つまり、イノベーションが、作り手であるスタートアップから、ユーザーである大企業という一方向に流れる構図が前提になっていったのである。この場合、スタートアップと大企業との間には、共同開発やノウハウライセンス、合弁契約といったリーガルワーク(法律業務)が発生する。ところが、法務部を有する大企業と異なり、スタートアップにはまず法務機能がない。そこで、外部弁護士を法務機能のアウトソーサー(外部委託)として活用しようということになる。

 今回は、こうした場面における弁護士のスタンスについて論じたい。

 そもそもスタートアップ企業とは、ある社会課題について、自身の提案するビジネスモデルによって解決できることをパイロットプラントレベルで実証する存在〔プルーフ・オブ・コンセプト(POC)〕である。そのため、スタートアップの法律支援には常にビジネス目線が必要である。大企業では、ビジネスに関わる法的な問題点の発見は法務部の役割だ。だが、法務部が存在しないスタートアップでは、外部弁護士がスタートアップのビジネスについて理解した上で、そこに内在する法的問題点を発見しなければならない。ビジネス目線をベースとした問題発見能力や課題認識能力が必要となるのである。

 ビジネスから入り、問題点を発見して、知財や法務という領域で定められた形式(例:契約書のレビューなど)に則(のっと)ってビジネスソリューションを提示していく──。これがスタートアップに対する法律支援の基本スタンスである。

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