北海道胆振(いぶり)東部地震で地盤と住宅の大規模な沈下が発生した札幌市清田区里塚地区では、地震発生から約2カ月がたった現在も、地盤に空洞ができるなどの変状が続いている。札幌市が地震後に里塚中央ぽぷら公園に設置した変位計は、10月末までに33㎜の沈下を記録した。この状況が、地盤被害の原因特定を難しくしている。

 公園の南側に住むある男性(44歳)は、地震前にリフォームしたばかりだ。住宅の不同沈下は免れたものの、敷地の地下に新たな空洞が複数見つかった。住宅の基礎付近に空いた空洞は、深さが70㎝以上あった。空洞を土砂で埋めた後も、再び隙間が発生している。

 この男性は「空洞に水を注ぐと、いくらでも地下に流れる。雨や雪解け水が流れ込んでさらに空洞が広がり、家が傾くのではないかと心配だ」と訴える。

公園の南側に住む男性の住宅の基礎のそばで、地震後に新たに見つかった空洞。こうした空洞が、男性の敷地内で少なくとも4カ所確認された(写真:住民提供)
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空洞の寸法を測っている様子。直径は約16㎝、深さは基礎の下端と同じ70㎝に達する(写真:住民提供)
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 公園の東側で、住宅が現段階で一部損壊となっている近藤早苗氏の敷地と隣地では、地盤のくぼみや亀裂、隙間が地震後に増加している。「変状は徐々に大きくなっている。地盤が激しく陥没した全壊の隣地の方に、地下の土砂が流れている。市に窮状を伝えても、民間の問題なので介入できないと言われるだけだ」と近藤氏は頭を抱える。

公園の東側にある近藤氏の敷地では、地震後に地面に張ったタイルが凸凹になった。目地の隙間も広がっている。地盤が陥没して住宅が全壊した隣の敷地側に、住宅や土留めが傾いた(写真:日経ホームビルダー)
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 この住民らは、宅地の下の空洞調査を札幌市に求めているが、市は応じない姿勢だ。その一方で市の土木部道路維持課は、里塚地区の道路面下の空洞調査を11月6日から実施することを明らかにした。この調査対象は地盤被害が大きかった範囲の外側に限られているので、住民の不満は増している。

 市土木部清田区里塚地区市街地復旧推進室の西山健一係長は次のように説明する。「宅地は民間の問題なので、地主が自分で調査して、復旧するのが基本だと考えている。大きな液状化が発生した後なので、地盤がしばらくの間動くのは一般的だと捉えている」

 道路面下の空洞調査について市土木部道路維持課は、「被災の原因を調べる調査ではない。道路の陥没事故を防ぐ目的で実施する」と説く。被災が大きかった箇所は、現在アスファルトの舗装工事を実施しているので、空洞が見つかれば一緒に修復する考えだ。

 現在も続く沈下に対して、市の見解や対応に疑問を呈する専門家がいる。「里塚地区の地盤沈下量は局所的で大き過ぎる。液状化だけでは被災原因を説明しきれない。土砂の流出で地下に大きな空洞ができている可能性がある。適切な対策を講じるためには、被災地域全域の地下を早急に調査しなければならない」。関東学院大学で教授を務めていた若松加寿江氏はこう指摘する。

 被災者の相談にボランティアで応えている地盤品質判定士協議会の諏訪靖二幹事は、「宅地は民間の問題というだけでは、被災者はどうしたらいいか分からず不安になるばかりだ。市は被災者に対してもう少し丁寧な説明が必要だ」と話す。

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