北海道胆振東部地震が発生した当日の2018年9月6日、札幌証券取引所(札証)は終日取引を全面停止する事態に追い込まれた。停電の影響で取引を監視するシステムを動かせなかったほか、従業員の一部が出社できず、オペレーションができない事態に陥ったためだ。

 札証には個人向けトレーニングジムを運営するRIZAPグループなど15社が単独上場する。これらの企業の株式が丸一日、売買できなくなった。札証が全銘柄の売買を停止したのは、証券会社など向けの相場報道システムで2012年に起きたシステム障害以来だ。

 札証の株式売買システムは、実は北海道内にはない。東京証券取引所が富士通と協力して開発した株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」を利用している。地震当日も首都圏にある同システムを稼働させることはできた。しかし、札証が北海道内の拠点で稼働させていた取引監視システムがネックになり、終日売買停止という事態を招いた。顧客への情報発信もままならず、札証の取引停止を東証がWebサイトで発表した。

 札証は道内の拠点に自家発電設備を用意していた。だが消防設備を動かす目的で導入したもので、継続して2~3時間程度しか発電できないという。

 札証のトラブルは、名古屋証券取引所や福岡証券取引所といった他の地方証取にとっても他人事ではない。これらの取引所は札証と同じくアローヘッドを使いつつ、取引監視システムは自前で運用している。BCP(事業継続計画)の見直しは急務だ。

停電でATMを中心に被害が広がった
図 証券取引所や金融機関の主な被害状況
札幌証券取引所9月6日の取引を終日停止。単独上場するRIZAPグループなどの売買ができず
セブン銀行9月6日朝時点で約1100台のATMが停止。9日夜に全台復旧
ゆうちょ銀行9月6日に道内全域でATMが稼働できず。13日朝までにおおむね復旧
北洋銀行9月6日は道内約170店舗のうち、主要地区を除く100店舗以上を開店できず

セブン銀は1000台超のATM停止

 地震は他の金融インフラにも爪痕を残した。セブン銀行は地震当日朝に約1100台のATMが止まった。翌朝には500台強が、9月9日夜に全台が復旧した。ゆうちょ銀行は震災直後、道内全域でATMが停止した。9月13日朝までにおおむね復旧している。いずれも主因は停電だ。

 北海道銀行や北洋銀行も6日は一部店舗やATMを稼働できなかった。13日時点でも節電に協力するため一部のATMを間引いて稼働させていた。

 地震はキャッシュレス決済の弱点もさらけ出した。電力供給が途絶えたことで、小売店のPOS(販売時点情報管理)システムなどが停止したほか、決済端末として存在感を増すスマートフォン(スマホ)への充電もできなくなったためだ。

 政府は現状2割程度にとどまるキャッシュレス比率を2025年までに4割に高める目標を掲げている。2018年春に「キャッシュレス比率4割」の目標を2027年から2年前倒ししたばかりだった。今後もクレジットカードやスマホ決済を中心にキャッシュレスが拡大していくことは確実で、災害時の代替手段を検討する必要がありそうだ。

 金融インフラのほか、自治体でも停電の影響が広がった。旭川市は地震当日の9月6日、市役所のネットワークが約9時間停止した。サーバーなどを動かすための自家発電装置がなかった。復旧は同午後0時半ごろまでずれ込んだ。職員は私物のスマホやタブレットで情報収集に努めたが、市民への情報発信は後手に回った。ここでも自家発電の不備で被害が拡大した。