「建設中の住宅で、透湿防水シートを留め付ける胴縁のくぎやタッカーの穴から雨水が浸入することはそれほど珍しい事象ではない」。こう話すのは住宅検査会社カノム(名古屋市)の長井良至代表だ。透湿防水シートに吹き付けた現場発泡の断熱材が、浸入した水分を吸収してしまったケースに遭遇したこともあるという〔写真1〕。

〔写真1〕断熱材が水を吸収
通気胴縁付近の透湿防水シートに染みのような部分があるのを発見。剥がしてみたところ、断熱材が水を吸収し湿っていた(写真:カノム)
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 確かに、透湿防水シートを留め付ける際に使用するくぎやタッカーは、シートを貫通するので物理的な穴が開く。「築7年で建て替えの憂き目に、じか打ちに潜むリスク」で紹介した住宅Bの場合も、くぎ穴などから水が浸入したと考えられる箇所がいくつかあった。

 とはいえ、穴のサイズはかなり小さい。水の浸入経路としてどの程度配慮すべきか悩ましい。

 胴縁を留め付けるくぎ穴からどの程度の水が室内側に浸入するのか。この疑問を透湿防水シートメーカーの旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツに問い合わせたところ、「実験して確かめてみたい」という返答をもらった。まずはその実験結果から紹介していこう。

胴縁周囲からの浸入はゼロ

 実験は簡易な形式で実施した。外壁の下地に見立てた合板に、透湿防水シートを張り、そのうえで左右に分けて2つの試験モデルを用意。上から水を1リットル程度散水して下地とした合板のぬれ具合を確認するというものだ〔図1〕。

〔図1〕水はたまったが浸入せず
立てかけた合板に張った透湿防水シートの上に、一般的な胴縁を留め付けた。左は横胴縁にあえてたまるようにした試験体。右は横胴縁に通気穴があり、水がたまりにくい試験体だ(写真:旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ)
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 図1の左側の試験モデルは、あえて胴縁部分に水がたまるように施工したものだ。縦胴縁と横胴縁を隙間なく留め付けた。横胴縁は通気穴がない材を使用しており、下地材の上部から流れてきた水がいったん横胴縁の上にたまる。

 他方、図1右側の試験モデルは、比較のために水がたまりにくい状態にした。横胴縁として通気穴がある材を使用。上から流れてきた水は、通気穴を通って下に流れ出る。

 実験の結果、「両方の試験モデルとも、合板に水が浸入した形跡はなかった」と、旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ建材グループの市川卓担当課長は説明した。そしてこう続けた。「左側の試験モデルには相当水がたまっていたため、さすがに浸入していると考えていた。だが、予想に反して浸入していなかった」

 なぜ水が浸入しなかったのか。市川担当課長は、「雨水などが透湿防水シートを越えて室内側に浸入するためには、いくつかの条件が必要になるからだ」と説明する。

 壁に水が付着した場合、小さな穴に入るよりも重力で下へと流れ落ちる量が多い。湿気となって通気層に浸入したとしても、上部から排出されれば、くぎ穴からは浸入しない。仮に水分が滞留する状態になっていたとしても、室内側に引き込む力が発生しなければ小さな穴からは浸入できないというわけだ〔図2〕。

〔図2〕浸入するには条件が必要
雨水の浸入は、水分が滞留したり、引き込まれる穴があったりなど複数の条件が重なって生じる。水分を排出・蒸散する機能があればトラブルに至りにくい(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)
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 建設中の場合も同様だ。透湿防水シートに雨が掛かったとしても、水が浸入する条件が整わない限り、悪影響を及ぼすほどのトラブルには至らないと考えられる。

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