知的財産権に関する多彩な情報を経営や研究・開発の戦略立案に生かす「IPランドスケープ」。その実践的な情報を提供していく本コラムの第1回目は、仮想通貨マイニング関連の特許出願状況に関する調査・分析である。

 調査・分析の結果、2015年頃から出願が増え始め、日本よりも海外(特に中国・米国)での技術開発が進んでいる状況が浮き彫りになった。出願内容からは、電源や熱対策に対する技術開発が重要になっていることが見えてくる。出願企業には、急成長する中国のベンチャーであるBitmainはもちろん、米Intelも含まれる。

カギはハッシュ関数

 仮想通貨のマイニングにはハッシュ(ハッシュ値、ハッシュ関数)と呼ばれるデータが使用される。仮想通貨の1つ、ビットコインで使用されるハッシュは「SHA-256」と「RIPEMD-160」である。ハッシュ関数(値)とは、ファイルの個体情報のようなもので、仮想通貨分野に限らず、データ比較の高速化や改ざん検出の用途で広く使われる。その源流は1950年代に遡ると言われるほど、古くから広く利用されており、ハッシュ関数計算用の装置(ASIC)も以前から研究されてきた。ハッシュ関数には多くの方式が存在し、また現在も計算方式の改良が続けられている。

 ハッシュ関数計算用装置(ASIC、IC、マイクロプロセッサーなど)に関する特許出願を見てみると、1990年以降は増加傾向にあり、とりわけ2010年以降には米国、中国を中心に一段と増加している(図1)。一方、日本の特許出願は2005年以降やや減少傾向である。韓国、台湾、インドの年間出願件数はゼロあるいは10件未満だった。いずれの国でも通信の暗号化や、ネット取引の安全性向上、計算の高速化などを目的とした出願が多く、インターネットや無線通信技術の普及に伴い、特許出願が増加しているように見受けられる。ハッシュ関数計算用のASIC自体は先進国を中心に数多く出願されており、特に目新しいものではないが、近年になりこの技術を応用した「マイニング用ASIC」が開発され、製品が登場するようになった。

図1 ハッシュ関数計算用装置の特許出願は増加傾向に
ハッシュ関数計算用装置(用途限定なし)の特許出願件数を国・地域別に示した。日本はこの10年ほど減少傾向にあるが、他は増加傾向にある。特に米国と中国の伸びが目立つ。
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