佐賀県小城市にある天山酒造は創業1875年、140年以上の歴史を持つ老舗の酒蔵である。

 6代目社長の七田謙介氏は2009年に就任。九州大学経済学部を卒業後、東京農業大学短期大学醸造学科で酒造りを学んだ。1872年創業の老舗酒造、梅錦山川(愛媛県四国中央市)に入社して修行した後、1997年に天山酒造に戻ってきた。

天山酒造本社前に立つ6代目社長の七田謙介氏
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トータル2億円を費やして工場改革

 天山酒造は2015年11月、トータル約2億円を費やし、イタリア製の充填機を導入するなど瓶詰めラインを一新。そのために建物も建て替えた。七田氏がこれまで進めてきた改革の集大成であり、創業140年目の挑戦だった。生産量が2500石(1升瓶換算で約25万本)の酒造にとって「非常に勇気のいる投資だった」と七田氏は振り返る。

 七田氏は天山酒造に戻ってから長い伝統を誇るこの酒蔵に最新技術を導入する大胆な改革を進めてきた。2006年には製麹の温度経過を正確に記録するためにデータロガー付きの温度計を導入。2010年には純米酒*1の醸造タンクのサイズを従来の11トンから3トンにサイズダウンした。製作したものの使用していなかったタンクを補修。サビ止めを塗装し、木製の蓋をポリプロピレンの蓋に替えて軽量化を図るなどの現場改善を実施している。

11トンから3トンにサイズダウンした現在のもろみタンク
(出所:天山酒造)
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ラベルを瓶に張る機械。
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*1 純米酒:米と米麹以外に、醸造アルコールを使用した「本醸造酒」に対して、米と米麹だけを使用しているのが「純米酒」。純米酒の中で、精米歩合の違いによって「純米吟醸酒」や「純米大吟醸酒」などに分類される。

 こうした工場改革を現場で推進した立役者がいる。天山酒造で杜氏*2を務める後藤潤氏だ。実は後藤氏、前職はプラント計装のエンジニアである。石油会社や化学メーカー、自動車会社など、国内外のさまざまな業界に納入したプラントの試運転やメンテナンスを手掛けていたという。

*2 杜氏:日本酒の醸造工程の最高責任者。酒造職人である蔵人らを率いて酒造りを担う。伝統的には杜氏と蔵人は季節労働者で本業として農業や漁業を営んでいることが多く、農閑期や漁閑期の11月頃から翌年4月にかけて、酒蔵に出稼ぎに来る。

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